マキタスポーツ×スージー鈴木が面白おかしく80年代歌謡曲を熱弁 『ザ・カセットテープ・ミュージック』が支持される理由

 近頃、音楽トークバラエティ番組が人気を集めている。歌詞や楽曲の深堀り、アーティストの特徴、ダンスパフォーマンス、音楽理論に至るまで、アーティストや専門家を招いてあらゆる角度から分析する『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)をはじめ、アーティストをゲストに招いて、年表を基にしたトークに軸足を置いた『バズリズム02』(日本テレビ系)と、音楽チャートの紹介やライブ歌唱とは一線を画す番組が安定した人気を誇る。

 2015年にスタートした両番組に続いて、2017年10月から放送開始した『ザ・カセットテープ・ミュージック』(BS12 トゥエルビ)もその一つ。前述の番組がヒットソングや新曲を取り上げる傾向にあるのに対して、80年代にカセットテープで聴いていた名曲を軸に、マキタスポーツとスージー鈴木の「音楽ずきおじさん」が独自の切り口で熱く語っているのが特徴だ。

 音楽理論と聞けば堅く、とっつきにくいイメージを持つが、『ザ・カセットテープ・ミュージック』では、聞き慣れた80年代の楽曲を取り上げ、身近な例え話や即興の楽器演奏と共に独自の解釈を噛み砕いて伝えている。時には王道に、時にはマニアックに。とにかく自由なのだ。自由といえば聞こえはいいが、音楽への愛情がヒートアップして番組がカオス化するのもご愛嬌といった具合。目からウロコのような知識を与えてくれる一方で、どこかの居酒屋で話を聞いているような軽妙なトークには親近感すら覚えてしまう。この視聴者との絶妙な距離感が『ザ・カセットテープ・ミュージック』特有の間口の広さであり、コアなファンに支持され続ける理由とも言えるだろう。

 例えば過去の放送回では、スージー鈴木が渡辺美里の「My Revolution」を最優秀転調大賞と紹介した。「キーがBからA♭に落ちました」と、サビ前の〈自分ひとりで癒すものさ〉のパートを、実際にギターで転調あり・なしバージョンを弾いてみせた。サビへとつながる実は重要なパートであり、抑揚の有無で随分と盛り上がりを左右する。

 マキタスポーツはこれを「転調元年と言いたいくらい」「この人工的な感じが非常に小室哲哉っぽい」と、それまでのアーティストは、わからないように転調していたと解説した。音一つで、こうも世界が変わるのかと視界が広がった。

 また、別の放送回では、スージー鈴木が「ミ♭」についての解説したのだが、実際に鍵盤でミ♭を聞かせた上で、マジックペンで「♭」を書いたミカンを持ち、曲中にその音が登場したときにミカンをかざして知らせていた。アナログ的な手法ではあるが、可視化することで記憶に残る。

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