セントチヒロ・チッチ、人を惹きつける“飾らなさ”が魅力に BiSHメンバー分析第2回

オーディションでは後輩に優しく寄り添う

 チッチはおそらく、BiSHの象徴である。ライブのMCで締めくくりの言葉を任される役割もしかり、メンバーや清掃員から信頼されているのは、活動を見守っていると十分に伝わってくる。

 しかし、強さだけではなく、自分の弱さをさらけ出してくれるのもまた魅力だ。メンバー全員が作詞を手がけるBiSHの中で、チッチが歌詞を担当した「ろっくんろおるのかみさま」は、彼女を知るために欠かせない1曲。先述の「DiET or DiE」でくじけそうになったチッチが、当時の気持ちをヒントにしたためた歌で、不満を抱えながらも現状を打破したいと願う人たちの心にきっと刺さる。

 また、グループを支える一方、所属事務所であるWACKの後輩への優しさも端々でにじむ。2020年3月から行われた合宿型の『WACK合同オーディション2020』では、現役生として参加し、ペアを組むことになった候補生のトト・パーティン・トトを“覚醒させること”が自分の役割だと力強く吐露。満足なパフォーマンスができない自分を悔やむ彼女に、そっと寄り添っていた。

 涙を流しながら後輩たちの行く末を案ずる姿は、オーディションを追った映画『らいか ろりん すとん -IDOL AUDiTiON-』でも垣間見える。

 今でこそ、チッチはBiSHのキャプテンではない。しかし、他のメンバーよりも一歩引いた立ち位置から、自然とグループやWACKを温かく見守っている。ときに熱く、ときに感情のおもむくまま涙する。飾らないその姿勢こそが、彼女に惹きつけられる最大の理由だといえるだろう。        

■カネコシュウヘイ
編集者/ライター/デザイナー。アイドルをはじめ、エンタメ分野での取材や原稿執筆を中心に活動。ライブなどの現場が好きで、月に約数万円はアイドルへ主に費やしている。単著に『BABYMETAL 追っかけ日記』。執筆媒体はWeb『ダ・ヴィンチニュース』『クランクイン!』『ウレぴあ総研』、雑誌『日経エンタテインメント!』など。

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