月9『イチケイのカラス』主題歌を歌う“WGB”の正体は? 様々な憶測飛び交う「Starlight」を検証

 歌詞は、静かに息づく自然の光景、そこに生きている人間の姿を描き、普遍性もありつつ、どこか儚げな雰囲気を包有。それは、日本的な趣を漂わすサウンドプロダクトとも絶妙に溶け合う。そうした中で、冒頭の〈そばにある大切さを 気付けない日々の中で〉というフレーズは、“真実が全て明かされることで、本当に大切なものに気づく”というドラマの世界観にも通じるものがあるように思える。

 また、サビの〈自分の言葉そのままに 焦りや迷いも乗り越えたい〉〈私がいつか全てのこと 歓びに変えて行けるように〉というリリックは、広く聴き手の共感を呼ぶものでありながら、ドラマの主人公・みちおの境遇や心情を投影しているようでもある。実は、みちおは元弁護士で、裁判官になった背景には、かつてのある事件が深く関わっている……という過去を持つ。このサビのセンテンスは、過去の因縁を抱えながら、裁判官に転身し、自分なりのやり方でそれを乗り越えていこうとする、みちおの姿そのものではないのだろうか。ドラマでは、物語が進むにつれ、彼の知られざる過去が次第に明らかになっていくという。「Starlight」の1コーラス目はポジティブな言葉で締めくくられているが、「星の光」のごとく、みちおにも輝く未来がやってくるのか。ぜひ見届けたい。

 最近では、はてな、和ぬか、泣き虫など、素性を詳しく明かさないアーティストたちがSNSや動画サイトを中心に台頭してきている。それは、作り手のキャラクターや情報を添えず、混じり気のない状態で作品が届けられ、受け手も先入観なくそれを楽しむことができるという理由からだろう。WGBももちろん、そういった意味での音楽的純度が高く、ドラマ視聴者も深い関心を寄せている。今後の動向にいっそう期待したいところだ。

■水白京
音楽・映像ソフトの制作・販売会社を経て、音楽ライターに。J-POPを中心にインタビュー、ライブレポート、 コラムなどの原稿執筆を行っている。主な執筆媒体は「リアルサウンド」「MANTANWEB」「オリコン」など。

『イチケイのカラス』公式サイト

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