AKB48、ももクロ、でんぱ組.inc……“アイドル戦国時代”に刺激与えてきたグループの現在

有名コンビニの店内放送で、でんぱ組.incの声が聞こえてきた!

でんぱ組.inc『プリンセスでんぱパワー! シャインオン! /千秋万歳! 電波一座! 』

 秋葉原発で個性爆発の展開をみせるのが、でんぱ組.incである。秋葉原のライブ&バー「ディアステージ」の従業員から構成されたでんぱ組.incは、学校や社会に対して生きづらさを感じていたメンバー自身が訴えかけてくるメッセージの強さにグッと引きつけられ、そんな彼女たちが何とか世界と向き合い、そして変えようと躍動する姿に感動があった。相沢梨紗は、RealSoundでのインタビュー(https://realsound.jp/2021/04/post-729689.html)でこのようにコメントしている。

 

「W.W.D」とかで、それまでキラキラしたステージに立つ人たちが言わなかったような心の闇を歌ったことは大きな分岐点だったと思います。最初はファンの人からも「なんでそんなこと言うの?」とか「そんなマイナスなこと言わなくても大丈夫だよ」みたいに否定的な反応もあって、自分たちも言わなくていいなら言いたくなかった。正直、めっちゃ嫌だったんですよ(笑)。でも同時に吐き出したい気持ちもあった。「W.W.D」を引っさげたツアーは特に心の面で体当たりな構成で、毎回パニックみたいな心理状態でライブをしていました。でも、今となっては本当に言ってよかったと思うし、あの曲のおかげで私たちは解放された気がします。

 さらに同インタビューでは相沢が「「オタク以外の人としゃべりたくない」みたいな子ばかり集まっていた。「社会生活のためのリハビリ」的に活動し始めた」と、グループの特徴を語っていた。でんぱ組.incは内向きなグループだったのだ。そんな彼女たちがアイドル戦国時代の波もあって、活動規模をどんどん拡大。あるときからファミリーマートの店内放送で「でんぱ組.incです!」という声がCMとして流れるようになり、それを初めて聞いたとき、胸がいっぱいになったのは筆者だけではないはず。

 アイドル戦国時代のなかで、外の誰かとやりあうのではなく、弱くて脆い自分自身と戦っていたでんぱ組.inc。しかし近年はメンバーの古川未鈴が結婚、妊娠を経験。アイドルの新しい生き方を示した。一方でアイドルの恋愛や結婚に対して否定的な意見もあり、2月には自身のInstagramで「前例があまりないことをしているので当たり前」「毎日やめようって考えています」と苦しい胸中を綴った。ただ、彼女たちはこれまでも自分たちなりに世界を変えようと頑張ってきた。そういったメンバーの生き様は、ファンだけではなく、今のアイドルたちの支えとなり、価値観の創出にもつながっているはず。グループ自体も、2月の成瀬瑛美卒業時に新体制を発表。過去最大の10人体制になり、ファンを驚かせた。こういうサプライズこそ、まさに彼女たちらしさ。でんぱ組.incはいつの時代も変化を恐れない。

 本稿では、アイドル戦国時代から現在まで第一線で活躍する3組を取り上げた(もちろん他にも論じるべきグループや個人がいることは承知している)。コロナ禍で、アイドルたちがかつてと同じような活動の形を取り戻すには、まだ時間がかかりそうだ。ただ、だからこそこれまでとは違うアイドルのおもしろさが発見される可能性もある。「アイドル新時代」はいつやってくるだろうか。

※掲載時、一部内容に誤りがございました。訂正しお詫び申し上げます。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter:https://twitter.com/tanabe_yuuki/

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