aikoがようやく“伝えられたこと” 歌詞とメロディで表現し尽くした言葉にできない心情

 前作『湿った夏の始まり』(2018年発売)と比較すると、編曲には長らくaiko作品のアレンジを担当していた島田昌典と、2014年のシングル『あたしの向こう』以来関わっているOSTER projectが継続して参加。そして一昨年の春に「FM802×TSUTAYA ACCESS」キャンペーンソングとしてaikoが楽曲提供した「メロンソーダ」以降、シングル曲でも関わり続けているトオミヨウを加えた3名体制でアレンジされている。

 島田の作品に耳を傾ければ、艶やかなウーリッツァーの音色に癒される「愛で僕は」や、イントロのアップライトピアノとハープの演奏が美しい「しらふの夢」、クラビネットが独特のソウル感覚を味付けしている「Last」など、多彩な楽器を駆使した豊かなサウンドのアレンジに浸ることができる。

 注目すべきはトオミヨウだ。聴き手を選ばないアレンジで近年注目されている彼は、aikoのアルバムとしては今回初参加となる。今作では既発曲含め計6作品で編曲を務めた。なかでも彼が編曲した「片想い」や「一人暮らし」に感じるのは素朴な生活感。彼の起用と、ほとんどのアルバム曲がコロナ禍で生まれた作品であることも作用して、本作はこの時代の人々の“日常を望む”ムードを捉えたアルバムにもなっているように思う。

■荻原梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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