東日本大震災から10年、『音楽の日』にこめられた願い 歌の持つ不思議な生命力

Bank Band feat. MISIA「forgive」

 そうしたなかで、今回の『音楽の日』をけん引していたと言えるのが、MISIAと櫻井和寿である。

 ブルーインパルスをバックに歌ったMISIAのようにともに持ち歌を歌うだけでなく、2人は「はるまついぶき」、さらに番組ラストには今回のためにつくられた新曲「forgive」で圧巻のコラボを繰り広げた。同曲は、〈えんやこら〉というフレーズが印象的な「力強く未来へ漕ぎ出す歌」(櫻井)。それは、オープニングの「花の匂い」と響き合いつつも、鮮やかなコントラストをなしていた。

 もうひとり今回の立役者をあげるとすれば、Bank Bandを率い、宮本浩次、milet、スガ シカオ、柴咲コウ、AI、森山直太朗らとのコラボで音楽の力を堪能させてくれた小林武史だろう。

 番組中紹介されていたように、小林自身も、被災地で長年復興支援活動を続けている。そしてほかにも、今回は出演していないが、たとえばRADWIMPSやGReeeeNのように、それぞれのスタイルで同じく復興支援活動を続けているアーティストは多い(RADWIMPSについては、3月13日にNHKで特番『3.11 10年 そしてこれから』が放送される)。今回の『音楽の日』は、音楽、そしてアーティストがいかにして社会とかかわり得るのかを教えてくれる貴重な機会にもなったのではないだろうか。

■太田省一
1960年生まれ。社会学者。テレビとその周辺(アイドル、お笑いなど)に関することが現在の主な執筆テーマ。著書に『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント』(光文社新書)、『ジャニーズの正体 エンターテインメントの戦後史』(双葉社)、『木村拓哉という生き方』(青弓社)、『中居正広という生き方』(青弓社)、『社会は笑う・増補版』(青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』、『アイドル進化論』(以上、筑摩書房)。WEBRONZAにて「ネット動画の風景」を連載中。

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