『AMUSIC』インタビュー

sumika、喪失から生み出した“最高傑作” 現在に至るまでの葛藤と創作を振り返る

 sumikaが前作『Chime』から約2年ぶりとなるニューアルバム『AMUSIC』をリリースした。3rd e.p.『Harmonize e.p』を挟み、通算3枚目となるフルアルバムは、TVアニメ『MIX』のOPテーマ「イコール」やドラマ『おっさんずラブ -in the sky-』の主題歌「願い」、映画『ぐらんぶる』の主題歌「絶叫セレナーデ」、第99回全国高校サッカー選手権大会応援歌「本音」などのタイアップ楽曲に加え、メンバー4人それぞれが作曲した新曲や、キーボード&コーラスの小川貴之がメインボーカルを務めたブライトなポップロックなどを含め、実に全16曲が収録されている。

 2020年3月末からスタート予定だった全国アリーナツアー『Daily’s Lamp』が延期となってしまったが、同年5月には医療やエンタテインメント従事者を支援対象とした基金「Dress farm 2020」を創設し、9月には初のオンラインライブ『Little Crown 2020』を開催。先の見えない暗闇の中でも希望の明かりを灯し続けてきたsumikaが2020年をどう過ごし、2021年をどう歩んでいこうとしているのか。彼らの今、現在のマインドが詰まったアルバムとなったようだ。(永堀アツオ)

原点に立ち戻って音楽と向き合った2020年

sumika

ーーまず、アルバムが完成した率直な感想からお伺いできますか。

小川貴之(Key/Cho)(以下、小川):2020年を乗り越えて、いい空気感でレコーディングできたので、とてもいい状態の曲たちが込められております。本当にいいアルバムができたなと思っていますし、このアルバムを聴いた上で、どのような感想をいただけるかが今から楽しみで、早く届けたいなという思いがあります。

黒田隼之介(Gt/Cho)(以下、黒田):いろんな緊張感を持って作っていたんですけど、終わって振り返ってみると、改めて、楽しかったなって思います。1曲1曲、ちゃんと思いを乗せて作れたので、めちゃくちゃいいアルバムができたと思っております。

荒井智之(Dr/Cho)(以下、荒井):昨年はいろんな分野の方々が辛い思いをしている中で、僕たちも影響を受けましたけれども、このアルバムを作れるということがすごく支えになっていたし、心の中で大事な拠り所になっていて。その結果、ほんとに自分たちでも納得できる、素晴らしい作品になったと思いますし、聴いてくださる皆様にとっても大事な作品になるといいなと思っています。

片岡健太(Vo/Gt)(以下、片岡):最高傑作だなと思います。こうやって言えることは当たり前じゃないと思ってますし、かといって、ビジネストークでもない。前作と比べて、どうフラットな目で見ても、絶対に最高傑作だなと思えるものが、2021年のこのタイミングで出せるっていうことをすごく嬉しく思っています。2020年、止まってしまったり、失ってしまったものもあるんですけど、それだけじゃなかったなって思わせてくれるのは、このアルバムができたからだと思うんですね。完成してくれたことに、……他人事のようですけど、感謝して、発売できることを嬉しく思ってます。

ーー16曲のフルボリュームで、サウンド的にもバラエティに富んでいるので、どこから話していいのか迷ってるんですよね。

片岡:(笑)。自由ですよ、どこを切っても大丈夫です。

片岡健太

ーーでは、アルバムの制作はどんなところから始めましたか。

片岡:アルバム用に曲作りしようかっていうタイミングで、タイトルの話をしましたね。自由すぎると、ともすれば散らばっちゃうというか、良くも悪くもいろんな方向に行く可能性があるので、タイトルを決めて、みんなが進む方向性だけを決めて、そのアプローチは自由にしよう、と。だから、タイトルは一旦、相談しました。

小川:アルバムのシンボル的な言葉をまず、いただくっていう感じですね。

片岡:そうですね。だから、まず、「仮で『AMUSIC』はどうだろうか?」っていう提案をして、そこから曲作りに入っていったかな。

小川:毎回、片岡さんからタイトルのプレゼンがあるんですけど(笑)、割と今回はさっくり目でしたね。

片岡:めっちゃさっくりしてた。仮だったから。

小川:前振りがあって、タイトルをバンって発表して、みんなが拍手するっていう(笑)。今回は、言葉の強さはあったけど、割と自由度は高いのかなと思いました。その後、いつもsumikaがやってるのは、こういう楽曲をやりたいよねっていうマッピングをするんですね。シングル曲とか、既存の曲がある中で、どの要素が足りないんだろうっていう話し合いをしてから、作曲に移っていく感じですね。

ーーアルバムのシンボルになったタイトルの意味を教えてください。

片岡:これは造語なんですけど、2020年、僕らもツアーができなくなっちゃって。音楽活動することができなくなったときに、一旦、音楽をやってる時に得られる感情が全部削ぎ落ちちゃったんですね。喜怒哀楽、全部が0になってしまった。ほんとに何も感じない状況だったんです。ほんとに感情が死んじゃったなって思ったことがあって。その時のことを、まずはちゃんと思い出して、次に取り掛かりたいなと思ったので、まず、「AMUSIA(アムジア)」=「失音楽」っていうところから始まって。音楽を失った後に、「Dress Farm 2020」(※1)の時に曲を作るっていう行程が始まりました。

ーーメンバーそれぞれが作曲した新曲4曲を初のリモートレコーディングで制作して発表しました。

片岡:そこで、自分にもなにかできることがあるかもしれないと思ったし、音楽活動の楽しみを自分たちで作っていって。もちろん、誰か喜んでくれる人がいるから楽しいなって思うけど、その前に自分たちが楽しんでやってる。誰かにやらされているわけではなくて、自分たちが楽しんで音楽をやっているっていうことがすごく大事だなと思ったので、それは自分たちにとっての娯楽であるという意味で、「AMUSEMENT」という言葉が出てきました。そこから何を作ろうとしているのかなって考えたときに、それはきっと誰にも真似できないものだって思ったんです。

 音楽は数えられないんですけど、唯一のものだなと思った時に、ひとつの音楽=「A MUSIC」と思いつきました。それは、sumikaだけじゃなくて、他のアーティストもみんな、そのアーティストにしかできないことをやってると思うんですけど、その人にしかできないことをやっているっていうことに、ちゃんと誇りを持ってやっていこうと。だから、自分たちにしかできない音楽を、失ってしまったことも思い出しながら、それでも楽しんでやっていこうっていう思いを一語にこめて、「AMUSIC」っていうタイトルにしました。

ーー自分たちにしかできない音楽を鳴らそうってことですよね。

片岡:それに尽きるなと思って。sumikaを始めたときから、大事にしていたことなので、原点に立ち戻ったという感じですね。去年の「Dress farm 2020」や『Little Crown』(配信ライブ)も、2020年にいきなりポンって出てきたものじゃなくて、過去にやってきたものを、今一度、原点に戻ってなんかやろうっていうタームだった。原点に立ち戻って、音楽をもう1回作るっていうのが、自分たちにとってもやるべきことだったのかなって思うんですよね。そこに強制的に戻されたけど、メンバーやスタッフ、チーム、sumikaを支えてくれる人と一緒に歩めるっていうのは、また新しい楽しみが始まるんじゃないかなって、2021年の今、思ってますね。