m-floら参加の『ヒプアニ』音楽集レビュー:アニメストーリーと合わせて楽しむ、新たな『ヒプマイ』の世界

 アニメ放送中は、“『ヒプノシスマイク』が見せる幻覚”を斬新な演出でビジュアル化したことも大きな話題となった。原作CDでは音声ありきでそれぞれの想像力に委ねられていた部分だが、今回のアルバムはその流れが逆に作用し、バトルシーンのトラックを聴けば、アニメの大胆な演出が鮮明に思い出されることだろう。これは今までの『ヒプマイ』の音盤にはなかった、アニメならではの楽しみ方である。

 特筆すべきは14曲目、m-floによる提供曲「Love Dimension」だ。『ヒプアニ』全編を通し、謎めいた存在であったアニメオリジナルキャラクターのトム・ウィスパー・ウェザコック、アイリス・イノセント・トレイター、太郎丸レックスの3人が結成したSecret Aliensの楽曲である。これまでの『ヒプマイ』にはない、透明感のある女性ボーカルに国際色豊かなリリックが重なってゆくスタイルは、終盤に明かされた彼らの正体や活動を考えれば納得。メロディに潜む煌めきや心地よいライムの中に、確固たる強さを感じることができる、m-floにしか成し得なかった楽曲と言えるだろう。

Secret Aliens『Love Dimension』(fromヒプアニ第12話)

 アルバムの最後は、各ディビジョンごとのバージョンで放送されていたED曲「絆」で締められている。過去それぞれのディビジョンに歌詞を提供したことのある様々なアーティストが参加しており、まさに“それぞれの絆”を綴った歌詞が、切なさすら感じさせる美しいトラックに載って紡がれてゆく。ディビジョンとしての絆だけでなく、一つの戦いを共にした全メンバーの絆も感じられ、アルバムのフィナーレとして感動的なナンバーだ。

 このようにバラエティ豊かな一枚だが、アニメのストーリーと合わせて、これまでの『ヒプマイ』の音盤とは一味も二味も違う楽しみ方ができる。『ヒプマイ』の音楽世界は今後ますます進化・成熟してゆく、そんな予感がするアルバムなのだ。

■草野英絵
ライター。アニメ、ゲームなどのエンタメ記事を中心に雑誌・WEBで活動中
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