映画『約束のネバーランド』はなぜ観る者の心を捉える作品に? プロデューサー・村瀬健に聞く制作秘話、ずとまよ起用の理由

 強烈なインパクトのストーリーと胸を刺すような作画によって、多くの人々を虜にしている『約束のネバーランド』。浜辺美波主演によって実写化された映画が現在公開中となっており、2020年末の日本で大きな話題を呼んでいる。

「連載数話目まで読んだ時点で『これは絶対に僕の手で実写映画化したい』と思って、速攻で出版社に電話しました」

 そう語ったのは、映画のプロデューサーを務めた村瀬健だ。本コラムでは、村瀬へのメールインタビューを行い、その回答を踏まえながら、映画『約束のネバーランド』や主題歌などの魅力について紐解いていきたい(以下、発言は全て村瀬によるもの)。

 『約束のネバーランド』は、白井カイウ原作・出水ぽすか作画によるファンタジー作品だ。「グレイス=フィールドハウス」という孤児院で、ママと暮らす子供達。そこは何不自由ない、安全で幸福な楽園のはずだった。しかしある日、最年長のエマとノーマンは、里親に引き取られたはずのコニーの死体と、異形の「鬼」を目撃してしまう。孤児院は楽園などではなく、鬼の食料とするための「食用児」を育てる農園であり、優しいママはその「飼育監」だったのだ。生き延びるため、エマたちは楽園からの脱獄計画を企てることとなる。

 物語の見どころは、孤児院内でトップの頭脳を誇るエマ、ノーマン、そしてレイの3人と、10数年以上に渡り子供たちを完璧に管理し続けてきたママ・イザベラとの頭脳バトルだ。策略、裏切り、心理戦。ページをめくる手が止まらなくなるような、裏の裏をかく息もつかせぬ原作の展開が、劇場版ではさらにスピード感を増して、約2時間のなかにぎゅっと詰まっている。

映画「約束のネバーランド」【予告】12月18日(金)公開

「設定がとにかく面白いと感じました。子供たちと管理者であるママたちとの心理戦と攻防、そして脱出劇の展開が常に読者の予想を超えたところに進んでいく。それが読んでて本当に面白かったし、ワクワクしました。面白すぎて睡眠時間を削ってまで見続けてしまう海外ドラマのような感覚で読みました」

 映画で描かれている『約束のネバーランド』は、サスペンスであると同時に「大人と子供」の物語でもある。

 「ネバーランド」とは、『ピーター・パン』に登場する架空の国の名で、そこに暮らす住人は年を取らず、大人になることはない。食用児として一定の年齢で殺されることを運命づけられていたエマ達は、「ネバーランド」から脱出して大人になる未来を目指す。彼らの前に立ちはだかるのが、子供の国に君臨する大人・イザベラだ。「諦めることよ。外にはあなた達が生きられる場所なんてどこにもない」と諭すイザベラに対し、エマは「ないなら作ればいい。私たちが生きられる場所」と答える。この構図は、子供を庇護しようとする親の願いと、自我が芽生えた子供の意思がぶつかりあう、自立の物語とも言えるかもしれない。

「原作を読んで、『これは母子の物語だ』と感じました。母と慕っていたイザベラが自分たちを殺そうとする存在だと知った3人とイザベラとの関係こそ、この作品の一番の面白さであり、物語の芯だと感じていましたので、脚本家の後藤法子さん、平川雄一朗監督と一緒に、そこを軸にした脚本作りをしていきました。そして“母と子”特有の『本当はこう思っているのに、伝えられない』というものが両者ともにあると思っていて、原作はそれをうまくストーリーに落とし込んでいるなぁ、と感じていました。なので、今回実写映画化するにあたり、その部分をしっかり描きたいと思って臨みました」

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