IZ*ONE、新作『One-reeler / Act IV』で見せた12人の“物語” 日韓でのスタイルの違いも鮮明に
以上のようにミニアルバムながら注目度の高いナンバーがずらりと並ぶ『One-reeler / Act IV』だが、完成度を高めた要因のひとつにコンポーザーのセレクトがうまくいったことがあげられよう。前作に収められた「Merry-Go-Round(回転木馬)」の仕上がりが評価されたのか、本作ではe.one(チョン・ホヒョン)に「Mise-en-Scène」と「Sequence」を依頼し、リードトラック「Panorama」は、ファンに人気の高い「Up(空の上)」(2ndミニアルバム『HEART*IZ』収録)を書いたKZとNthoniusを再起用している。そして「Slow Journey」では、GFRIENDの代表曲を手掛けたイギヨンベがキム・チェウォンをサポートするなど、制作サイドのセンスが光るものばかりだ。
本作でガールクラッシュ的な魅力をより強調した彼女たちは、日本ではまったくと言っていいほど正反対のイメージで勝負するのが面白い。12月2日にフジテレビ系列で放送された『2020 FNS歌謡祭』で、IZ*ONEは日本語曲「Beware」を披露したが、こちらは『One-reeler / Act IV』で見せたクールな佇まいと違い、ひたすら爽やかでキュートだ。
日本と韓国では求められるものが違うということもあるだろうが、とにかくひとつのグループでふたつのスタイルが同時に進行しているというのは、K-POPでもJ-POPでもIZ*ONEだけではないだろうか。
こんなユニークな個性を持つグループをもっと長く見たいと思うのは、ファンであれば当然である。韓国では最近、「活動期間延長に関する話し合いが近々行われるのではないか」というニュースが報じられた。2021年4月に活動休止すると現時点では決まってはいるものの、延長する可能性も出てきた、というのだ。この話が「事実」になることを期待したい。
■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。2000年に執筆活動を開始。『ミュージック・マガジン』など専門誌を中心に寄稿。『ジャズ批評』『韓流ぴあ』で連載中。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著も多数あり。