森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.225

Mr.Children、King Gnu……バンドの表現方法を拡大させた作品 新譜からピックアップ

 ロンドン、LAのスタジオでアナログ録音されたMr.Childrenの新作『SOUNDTRACKS』、傑作アルバム『CEREMONY』以降の方向性を示すKing Gnuのニューシングル『三文小説 / 千両役者』などを紹介。バンドの表現方法を拡大させた新作ばかりです!

Mr.Children『SOUNDTRACKS』

 前作『重力と呼吸』以来、約2年2カ月ぶり、通算20作目となるニューアルバム『SOUNDTRACKS』は、U2やサム・スミスとの仕事で知られる名エンジニア スティーヴ・フィッツモーリスを迎え、ロンドン、LAのスタジオで録音された。徹底的にアンサンブルを研ぎ澄ませ、ギター、ベース、ドラムによる生々しいサウンドからは、“この4人が揃って音を鳴らせば、Mr.Childrenになる”という確信が伝わってくる。作品を重ねるごとにロックバンドとしての存在感を強め続けている事実こそが、このバンドの凄さであり、四半世紀以上も支持され続けている理由だろう。リスナーの日々に寄り添い、少しでも彩りを与えたいという思いに溢れた歌詞も本作の魅力。特に「Documentary film」における“すべての命には終わりがあり、だからこそ愛おしい”というメッセージ、そして、〈心の火をそっと震わせて 何度だって 僕を繰り返すよ〉と歌う「Birthday」はこのアルバムの核につながっていると思う。

Mr.Children「Documentary film」MUSIC VIDEO
King Gnu『三文小説 / 千両役者』

 今年1月にリリースされたアルバム『CEREMONY』で2020年代のポップミュージックのあり方を決定付けたKing Gnuのニューシングル『三文小説 / 千両役者』。美しくも悲しいメロディを軸にした「三文小説」では、たとえ三文小説みたいな人生であっても、〈愚かだと分かっていても尚/足掻き続けなきゃいけない物語があるよ〉と歌い、鋭利なギターカッティングからはじまる「千両役者」ではブラックミュージックとロックがぶつかるバンドグルーヴとともに、〈好き勝手放題の商売/後悔なんて面倒臭いや〉と言い放つ。King Gnuの爆発的なブレイクの後に訪れた虚無と開き直りを想起させる2曲は、現在の彼らの心情をリアルに映すと同時に、リスナーに対し、“おまえはどう生きる?”と突きつけているようにも感じる。高度な音楽性と刃のような感情表現を併せ持った、きわめてスリリングなシングルだ。

King Gnu - 三文小説

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