NMB48 吉田朱里、10年間で築き上げたアイドル人生 ラストシングル曲「恋なんかNo thank you!」までを追う
NMB48の吉田朱里が、11月30日に10年間続いたアイドル人生の幕を閉じようとしている。
吉田朱里とは、努力の人だ。1期生でグループ創設メンバーである吉田。同期には山本彩と渡辺美優紀というNMB48を形作った2人、次のグループを担うメンバーとしてセンターの一人に抜擢され今では最後の1期生の看板を背負うこととなった白間美瑠と錚々たる面々が並ぶ。もちろん、その一人に吉田の名も刻まれていることは言うまでもないが、彼女が山本らのように多くの人に認められるまでには長い年月が必要だった。
「アイドルというものの成功が分からなくて、何をやってもうまくいかなくて」ーー10月24日に大阪城ホールで開催された『NMB48 吉田朱里卒業コンサート 〜さよならピンクさよならアイドル〜』で、吉田は最後のスピーチにて苦節の時期を振り返っている。もともと芸能界に入りたいという一心でNMB48に加入した吉田は、アイドルは向いていないのではないかと、時に落ちるところまで落ちることもあった。
そんな暗闇の中にいた吉田に一筋の光が差し込む。それが、現在チャンネル登録者数80万人を誇るYouTubeチャンネルだ。彼女がチャンネルを開設したのは、2016年1月。当時、女性YouTuberとして活躍する人物はまだ少なく、特例ではあるがAKB48グループでは常にビデオカメラを回し続けていたSKE48の卒業生・松村香織がチャンネルを持っていたぐらいであった。失敗したら芸能界から身を引く覚悟、まさにラストチャンスとして始めたYouTubeが大ヒット。メイク術や最新コスメ情報などを現役アイドル目線で紹介する、今やごまんといるアイドル/美容系YouTuberの先駆けとなったのが吉田である。山本彩が名付けた“女子力おばけ”というあだ名もぴったりハマり、後に年に2冊のフォトブック発売、ファッション誌『Ray』の専属モデル、コスメプロデュース……と女子力革命を巻き起こしていくこととなる。NMB48の女性ファン層を拡大した立役者だ。
そのYouTubeでの人気が目に見えて結果に表れたのが、2016年末に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の企画として行われた「AKB48 夢の紅白選抜」で6位に入ったことだ。勢いそのままに、翌年リリースのシングル『シュートサイン』で初めてAKB48での選抜入り。その年開催の『AKB48 選抜総選挙』では16位で選抜メンバーに。2018年には14位へとランクアップし、NMB48だけでなく、AKB48グループを代表する一人へと駆け上がっていった。
今や子供のなりたい職業として上位に挙がるほどポピュラーな存在となったYouTuberだが、その裏側は体力的にも精神的にも根気のいるハードな仕事だ。誰もが知っている有名人でも、なかなか登録者数が伸びずにフェードアウトしていく現実もある。それを吉田は現役アイドル兼YouTuberとして、自身で動画編集も担当し、多忙な日々を乗り越えてきた。彼女の人気コンテンツの一つとしてある1日密着シリーズは、そんな光と影をリアルに映し出している。ポジティブで負けず嫌いなその性格に加えて、コンテンツを上げ続けられる力というのは、吉田がファンから絶大の信頼と人気を獲得した大きな要素の一つ。吉田が卒業コンサートの1曲に選んだ「初めての星」の歌詞、〈そう 努力はつらいものじゃない/好きだからこそできるんだ〉〈でも あきらめなければ必ず/チャンスはあるってことさ〉は、これまでの10年間にわたる努力とその先にあった栄光を歌っている。