秦 基博『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 ‐コペルニクス‐』見どころ “配信に特化した演出”でアルバムはどう進化する?

 興味深いのは、秦が今回の配信にあたり数々の名MVを手掛けた番場秀一を映像監督に迎えている点である。番場は秦の「70億のピース」MVを撮影した人物だが、ライブを配信ライブに変換するにあたって、音楽シーンで随一の存在感を誇る映像作家を挟んだというのは、秦がこの配信ライブを通常のライブ映像とは別物にしたいと考えていることを表している。前回の『Live at F.A.D YOKOHAMA 2020』が「いかにライブそのままを見せられるか」という挑戦であったとすれば、今回はその対極の「配信ライブという形で『コペルニクス』の世界観をどう表現できるか」というテーマに臨んだと言えるかもしれない。

秦 基博 - 「70億のピース」 Music Video

 さらに言い換えれば、秦は完成の領域まで進んでいた“ライブ版『コペルニクス』”をアップデートし、今回“配信ライブ版『コペルニクス』”として我々の前に提示しようとしているとも言える。配信専用にチューニングされた『コペルニクス』の世界がどのようなものになるのかーーそれは音楽と映像、演奏と演出、肉体のパフォーマンスと視覚的なエフェクトが混在したものになることが予想されるが、となるとそれは生演奏と打ち込みのハイブリッドを目指した『コペルニクス』のコンセプトとも合致するわけで、ツアー中止というアクシデントを乗り越え、最後の最後にこうして辻褄を合わせてしまうミラクルには唸らざるを得ない。まるで最初からこの配信ライブが『コペルニクス』プロジェクトの終着点であったかのように、見事な導線が引かれているのである。

 そして、導線という意味では、このライブは秦自身にとっても一本の太い線を引くようなものかもしれない。

 配信ライブが行われるのが11月19日。映像は23日までアーカイブされるが、その翌週の30日からは秦が主題歌を務めるNHK連続テレビ小説『おちょやん』がスタートする。延期されていた『コペルニクス』の表現が一区切りを迎え、ここから「泣き笑いのエピソード」が切り拓く新たなる局面に入っていくーーつまり今回のライブには、再び国民的な脚光の中に飛び込んでいく直前の、秦の姿が映し出されるはずなのである。

■清水浩司
広島の文章屋。現在、広島FMで『ホントーBOYSの文化系クリエイター会議』(毎週金曜10:30~11:00)やってます。

■公演概要
『HATA MOTOHIRO CONCERT TOUR 2020 -コペルニクス-』
2020年11月19日(木)20:00~開演
※11月23日(月)23:59までアーカイブ配信あり

・チケット:3,900円(税込)
・チケット販売期間:10月26日(月)18:00~11月23日(月・祝)18:00
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・配信サイト:Streaming+

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