私立恵比寿中学「仮契約のシンデレラ」、TikTokをきっかけに再注目 新規リスナーにも届く楽曲本来のポテンシャル

 ヒットのきっかけは倍速の音源だったが、YouTubeのコメント欄には現在「TikTokで知った」という文言が溢れており、原曲に辿り着いたユーザーも多い様子。ミュージカル調の台詞回しや中学校の授業で習ったような耳に残るフレーズを織り交ぜた歌詞、ベートーヴェン「エリーゼのために」を引用したメロディや緩急ついたリズムワークなど、終始飽きさせない工夫が施された原曲の魅力も確実に新規リスナーのもとへ届いたのだ。

 10月24日からはYouTubeで「♯Radio Ebi 24~🦐は地球で遊ぶ~」なるチャンネルがローンチされた。過去にリリースされた150もの私立恵比寿中学の楽曲を24時間流し続けるライブ配信チャンネルであり、国内メジャーアーティストとしては初となる試みだ。偶発的なTikTokでのヒットを考えれば、このチャンネルを通じてこれまでの作品が改めて注目され過去曲や旧譜の活性化に繋がる可能性がある。また、11月1日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で私立恵比寿中学から安本彩花と柏木ひなたの2名が「令和のアイドル界 スゴいボーカリスト10人」に選出されるなど、その実力が正当に評価されつつあり、活動への追い風は止まらない。

♯Radio Ebi 24~🦐は地球で遊ぶ~

 2020年、従来にない思いがけない形でヒット曲を獲得した私立恵比寿中学。これは今も昔もぬかりなくウェルメイドなポップソングを希求してきた制作陣、そしてメンバー全員が成人を迎えた今も「私立恵比寿中学」の名を絶やすことなく活動を継続してきたたゆまぬ努力の結晶だろう。その多彩な楽曲群、丹念に作り込まれた歴代の名盤たちが世間に広く届くチャンスを得た今、この波に乗りどこまでも突き抜けて欲しいと願う。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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