別れを告げるCrushとKIRIN、再会を祝うLOCOやNucksalーーそれぞれの状況と想いが刻まれた、韓国HIPHOP/R&B5作

 よく「出会いの数だけ別れもある」と言う。韓国のヒップホップ/R&Bシーンでは毎月多くのフレッシュな新人が次々と登場する一方、それぞれの理由で活動休止や引退を発表するアーティストも少なくない。もちろん、休止から復帰するアーティストもいる。今回は、久しぶりに活動を再開させたアーティストのアルバムや、別れを前に発表した作品など全5作を紹介したい。

Crush『with HER』

Crush (크러쉬) - ‘놓아줘 (with 태연)’ MV
Crush『with HER』

 去年、PSY率いるレーベル<P NATION>に移籍した後、アルバム『From Midnight To Sunrise』やPink Sweat$とのコラボシングル「I Wanna Be Yours」、さらにRed Velvetのジョイとのコラボシングル「자나깨나」をリリースするなど、活発な活動を続けてきたCrush。そんな彼が11月12日の入隊日に先立ち、特別なEP『with HER』をリリースした。タイトルからも分かるように、各収録曲で異なる女性アーティストとコラボしている。4年前、「Don’t Forget」でコラボした少女時代のテヨンと2度目となるコラボ曲を始め、最近YGエンターテインメントから<AOMG>に移籍した LEE HI、韓国の音楽番組『Begin Again Korea』で競演した伝説的なポップ歌手 Lee So Ra、ラップとシンギングの両方で最高の実力を持つと評される YOON MIRAE、最近注目を浴びる新人 BIBIなど、多彩で素晴らしいラインアップだ。テヨンを迎えたリードトラック「놓아줘」は韓国をはじめ、シンガポール、タイ、フィリピンなどでもチャート上位にランクインするなど、本作はグローバルな話題も集めている。入隊にあたりこれから1年半以上、彼の新しい音楽を聴けなくなるのは惜しいが、その前にこれほどのアーティストたちを迎え、1つの作品を思いっきり作ってくれたことに感謝したい。

KIRIN『The Town』

KIRIN『The Town』

 韓国ではここ数年「レトロブーム」が非常に盛んで、KIRINはそのブームを最前線で引っ張ってきたアーティストの一人だ。2009年にデビューを果たしたKIRINは、2010年代初めから1980〜1990年代の音楽に影響を受けたニュージャックスウィングやR&Bを披露してきた。彼は音楽のスタイルを借用しただけでなく、ファッションやアートワークなどにもその時代のエッセンスを反映させている。<AOMG>や<H1GHR MUSIC>を率いるJay Parkや、プロデューサー及びR&Bアーティストとしても知られるSUMINともコラボEPを発売。さらに、日本のラッパー ZEN-LA-ROCKともコラボEP『THE FUNKLUV』をリリースしている。また、2015年には自身のレーベル<8BallTown>を立ち上げ、SFC.JGR、BRONZE、meenoiといったアーティストらもサポートしてきた。

KIRIN(기린) - Sachi(사치) (feat. Plastic Kid) (Official M/V)

 そんな彼が、6年ぶりにリリースする3rdアルバム『The Town』を最後に引退すると発表した。アルバムには彼が10年近く追求し続けてきたニュージャックスウィング/R&Bのサウンドをベースに、普通の恋愛さえ贅沢になってしまった現実など、現世代が共感できる話が盛り込まれている。レトロを新世代の感性で再解釈するという意味の「ニュートロ」という言葉は,どうやらKIRINというアーティストの存在そのものを説明してもいるようだ。アーティストとしてのKIRINとは本作を最後にお別れしなければならないが、最後のトラック「Puff Daehee Intro: The Message」から、彼のもう一つのオルターエゴである“Puff Daehee”として帰ってくることを期待したい。

LOCO『SOME TIME』

로꼬 (Loco) - '잠이 들어야 (Feat. 헤이즈)' Official Music Video [ENG/CHN]

 ここまでは別れを迎えなければならないアーティストたちの作品について取り上げてきた。しかし、別れがあれば出会いもある。2019年2月、義務警察として兵役を始めるため活動を休止したLOCOが、元気な姿で戻ってきたのだ。 9月12日に除隊して以来、まさかわずか1カ月足らずで新しいEPをリリースするとは。それだけLOCOが軍隊にいる間、創作活動に飢えていたということだろう。

LOCO『SOME TIME』

 LOCOは本作で“時間”というテーマを基に、過ぎ去った日々とこれから訪れる日々に対する個人的な経験と考察、また時間の流れによる心境の変化を描いた。実際に約1年半の間、ラッパーではない時間を過ごさなければならなかった彼には、“時間”が非常に重要なキーワードだったのかもしれない。「帰宅」「面会室」などの曲タイトルからも軍生活を連想させる本EPの歌詞の多くは、実際にその合間に書かれたという。LOCO特有の聴き心地のいいラップと率直な歌詞、そしてスムーズなメロディは、まさにファンたちが求めていたものだ。フィーチャリングとしてはHeizeとCar, The Gardenが参加。特にLOCOは女性ボーカルとの相性が抜群で、Heizeを迎えたリード曲「잠이 들어야」は配信ランキングでも上位にランクイン。彼の人気が今も変わらないことを証明した。

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