ばってん少女隊、『ふぁん』で遂げた大きな飛躍 5年間を振り返るプレイリストに見る音楽的な成長
もともとばってん少女隊は、活動の拠点である福岡の“めんたいロック”を彷彿とさせるバンドサウンドに、現代的なスカコア/スカパンクなどの要素を積極的に取り組んだ「ロックファンにも引っかかる」テイストが特徴だった。メジャーデビュー曲「おっしょい!」(2016年)や3rdシングル「すぺしゃるでい」(2017年)はそれを象徴するような楽曲で、スカパンクの疾走感とアイドルらしいキラキラ感がミックスされた、一度聴いたら癖になる仕上がりだ。また、前者を渡邊忍(ASPARAGUS)、後者を4106xxx(ex. SCAFULL KING)が楽曲制作していることも注目ポイントで、特に渡邊は最新作『ふぁん』ではもっとも異彩を放つ「OiSa」を提供しているのだから、その落差にも惹かれるものがある。と同時に、難解さを伴う「OiSa」という楽曲を歌いこなすことができるようになった今のばってん少女隊の成長にも驚かされるはずだ。
渡邊忍以外にも、先ほど「MILLION SUMMERS」で名前の挙がったKEYTALKの小野武正もばってん少女隊の楽曲制作には欠かせないアーティストだろう。代表曲のひとつ「よかよかダンス」はThe Specials以降の2トーンスカをベースに敷きつつ、現代的なアイドルソングらしく転調を多用したアレンジを散りばめることで、「おっしょい!」で築き上げたばってん少女隊らしさをアップデートさせることに成功。さらに小野は「BDM」にて、スカのビートにKEYTALKにも通ずるオルタナティブロック感もミックスさせ、独自性をより強めていくことになる。「MILLION SUMMERS」へと向かう過程を考えると、「よかよかダンス」と「BDM」はばってん少女隊の歴史上欠かすことができない2曲と言える。
スカパンクの流れでいえば、1stアルバム『ますとばい』(2017年)のタイトルトラックも欠かせない1曲だ。オープニングのシンガロングパートはハードコアバンド真っ青な凄みを感じさせるが、いざAメロに突入するとアイドルソングならではのポップネスが一気に強まり、サビでは王道スカパンクらしいストレートさと哀愁味の強いメロディで聴き手のハートをわし掴みにする。その対比に心地よさを覚えるロックファンも少なくないのでは? ハードコアチックといえば、2ndアルバム『BGM』(2019年)には「己Myself」のような楽曲も用意されており、こういったトライも今思えば続く3rdアルバムへの布石だったのではないかと思えるほどだ。
思えば、ばってん少女隊は前作『BGM』でも“Batten Dance Music (BDM)”をテーマに掲げ、現在に至るような変化や進化に果敢に取り組んでいた。当時の年齢に合った、弾けんばかりのハピネスに満ちた『ますとばい』を経て、CHAIのユウキが作詞を手がけた和テイストのミディアムロック「Killer Killer Smile」、TAKUYAが作詞・作曲を担当したアップテンポのロックナンバー「崇シ増シ×××物語」では年相応に成長したメンバーの歌を堪能することができる。初期のスタイルと最新のスタイルをつなぐ橋渡しとしても、『BGM』という作品はグループの歴史上なくてはならない作品と断言できる。
このほか、『BGM』までの楽曲にはロカビリーテイストやスウィング感の強い楽曲が含まれていることも特徴として挙げられる。『ますとばい』だったら「とーと。」、『BGM』では「ハカタダンスホールベイベー」がそれにあたり、両曲とも松田“CHABE”岳二が作曲を(「とーと。」では作詞も)手がけていることを考えると、彼がばってん少女隊サイドからどんな要素を求められていたかが伺えるだろう。個人的には、「とーと。」の中盤に突如モータウン調ビートに転調するパートがお気に入りだ。
さて、過去の楽曲をなぞりながらばってん少女隊の歴史を振り返ってみたが、こうしたさまざまなトライがあったからこそ、今の彼女たちにぴったりなダンスミュージックアルバム『ふぁん』が完成したのだと考えると、やはり感慨深さを感じずにはいられない。5年というのは短いようで長いという微妙な数字だが、その期間にこれだけの変化と進化を遂げたばってん少女隊が、ライブを通じて『ふぁん』の楽曲をどう成長させていくのか、また過去の楽曲と新曲が混ざり合うことで5人の表現力がどこまで伸びるのか。今から楽しみでならない。
まだ『ふぁん』を聴いていないというリスナーは、これを機にCDやストリーミングサービスを通じてアルバムに触れてもらいつつ、改めてばってん少女隊の過去の楽曲にも目を向けてもらいたい。彼女たちがどれだけ果敢に音楽と向き合ってきたかが理解できるはずだから。
■プレイリスト
「おっしょい!」
「よかよかダンス」
「Killer Killer Smile」
「とーと。」
「ますとばい!」
「己Myself」
「崇シ増シ×××物語」
「BDM」
「ハカタダンスホールベイベー」
「すぺしゃるでい」
■リリース情報
『ふぁん』
発売:2020年10月28日(水)
【収録楽曲】
1. ふぁんtasy(作曲:久下真音)
2. スウィンギタイ(作詞・作曲:AKIRASTAR)
3. MILLION SUMMERS(作詞・作曲:小野武正 / 5週連続リリースシングル)
4. OTOMEdeshite(作詞・作曲:久下真音)
5. でぃすたんす(作詞・作曲:久下真音 / 5週連続リリースシングル)
6. OiSa(作詞・作曲:渡邊 忍)
7. Dancer in the night(作詞・作曲:KAKUWA / 5週連続リリースシングル)
8. ジャン!ジャン!ジャン!(作詞・作曲:フジノタカフミ)
9. ありがとーと(作詞:ヤマモトショウ 作曲:Yocke / 5週連続リリースシングル)
10. Dear My Blues(作詞・作曲:ANDW)
11. Just mean it! (作詞・作曲:久下真音)
12. Over(作詞・作曲:金子麻友美 / 5週連続リリースシングル)
【ボーナストラック】
<ダウンロードカード付き豪華動画盤>
13. Happy (作詞・作曲:KAKUWA)
<ごいっしょ盤(メンバーごと5種)>
Happy(希山愛 ソロver.)
Happy(上田理子 ソロver.)
Happy(春乃きいな ソロver.)
Happy(瀬田さくら ソロver.)
Happy(星野蒼良 ソロver.)
【リリース形態】
<通常盤>
価格:3,000円(+税)
仕様:CD(全12曲)
<ダウンロードカード付き豪華動画盤>
価格:5,000円(+税)
仕様:CD(12曲+ボーナス・トラック「Happy」(全員歌唱))+豪華仕様ブックレット+映像特典(Mカード)
【映像内容】 「JUPITER BATTEN GIRLS LIVE 2020 SUMMER」密着ドキュメント / 夜の城島高原パークドキュメント / 城島高原パークで遊ぶVlog / 「Happy」MV(by星野蒼良)
<ごいっしょ盤(メンバーごと5種)>
価格:10,000円(+税)
仕様:CD(12曲+ボーナス・トラック「Happy」(各メンバーソロ歌唱))+ボーナス・トラック「Happy」の各メンバーソロ歌唱+メンバーこだわりブックレット+映像特典(Mカード)
【映像内容】メンバーごとの特別企画映像 / 「JUPITER BATTEN GIRLS LIVE 2020 SUMMER」ドキュメント ディレクターズカット(各メンバーフォーカス) / 各メンバーコメント / 「Happy」MV(by星野蒼良)
<スペシャルグッズ盤>
価格:4,800円(+税)
仕様:通常盤CD(12曲)+各メンバーアクリルキーホルダー
※通常盤CDに各メンバーのアクリルキーホルダーが付属したスペシャルセットとして数量限定で販売。
■イベント情報
『ばってん少女隊 リリース記念LIVE “ふぁんtasy” 2020』
日程:2020年11月1日(日)
場所:KT Zepp Yokohama
日程:2020年11月8日(日)
場所:ZeppFukuoka ※ソールドアウト