シングル『灰色のサーガ』インタビュー
ChouChoが語る、『灰色のサーガ』に込めた前向きな気持ち 「今まで以上に寄り添える楽曲を作っていけたら」
もっと知りたいと思う奥深い作詞の世界
ーーイレイナは幼いころに読んだ本から影響を受けて、魔女になって旅をしますよね。イレイナのその一冊の本のような、ChouChoさんにとって原点となるものは何ですか?
ChouCho:すごく印象に残っているのは、アラニス・モリセットが1995年にリリースした「You Oughta Know」という曲です。『MTVアンプラグド』という番組でそれを歌っている映像を見たことがきっかけで、アラニス・モリセットが好きになりました。『MTVアンプラグド』のライブ映像が本当に素晴らしくて、いつか自分もこんなライブがしたいと思うようになって。その憧れが今も続いていて、実際にアコースティックライブを定期的に開催していますし、私にとってはとても大きなきっかけの曲ですね。
ーーそれを見たのはいつぐらいですか?
ChouCho:学生の時です。当時はロックバンドを組んで、学園祭に出たりしていて。そんな時にその映像を見て、「こういうサウンドもあるんだ」と知って。当時はまだ学生だったし、音楽の知識もまだそんなになかったんですけど、アコースティックの空気感に惹かれて「良いな」って。
ーーアコースティックは歌が引き立って、その人の根源にある音楽性が浮き彫りになるような感じがありますね。
ChouCho:はい。自分は歌が好きなので、たぶんその時も歌にフォーカスして見ていたと思います。歌がより魅力的に聴こえるのは、アコースティックならではの良さだなって思います。
ーーChouChoさんは、定期的にアコースティックライブをやって、アコースティックアルバムも出しています。憧れていたアコースティックサウンドを、今こうして体現できていることについてはどう思いますか?
ChouCho:すごくありがたいことだと思います。でも当時の自分からは想像もつかなかったことなので、やっぱり不思議な感覚もありますね。でもまだまだ理想には届いていないので、もっともっと磨いていきたいなと思います。
ーーアラニス・モリセットの『MTVアンプラグド』が理想型?
ChouCho:理想ではあるけど、最初のインパクトがとても大きなものだったので、それを越えることはできないでしょうね。でもずっと大好きなサウンドですし、その理想を追い求めていくと思います。
ーー歌詞に〈ただ「知りたい」から〉というフレーズも。ChouChoさんが今知りたいことや好奇心を持っていることは?
ChouCho:今は作曲も作詞もやらせていただいていますが、意外と作詞のほうが難しく、奥が深いなと思っています。すごく言葉に迷ってしまうことが多いんです。今回の「灰色のサーガ」はわりとすんなり書けたほうですけど、カップリング曲「hide and seek」も作詞作曲をしているのですが、こちらは作詞にすごく時間がかかってしまって。なので知りたいと言うか、もっとたくさん歌詞を書いて、作詞の能力をどんどん上げていきたいなと思っています。
ーー作詞の能力を上げるのに一番なのは、たくさん書くこと?
ChouCho:そうだと思います。作詞に関してはすでに相当数を書いてはいるんですけどね。それでもまだまだだなと感じます。アニメタイアップ曲で、作品の世界観を上手に表現できたと思う時はあるんですけど、やはりプロの作詞家の方が書くよりも時間がかかりますし、まだまだ成長段階だなと思っていて。
ーー作詞家で好きな人や憧れるような人はいますか?
ChouCho:作詞家さんというよりは、自分で作詞をされているアーティストさんですね。好きな歌詞は、やっぱりアーティストさんが書かれたものが多いです。たとえば松任谷由実さんは、いつ読んでもすごいと思うし、自分が作詞をする上での勉強にもなります。あとバンドをやっていた時代に椎名林檎さんの曲をよくコピーしていて、林檎さんの歌詞もすごいなって。そもそも視点が違うなと思うので、マネできない独自の世界観を持っています。そういうみなさんの曲を聴いたり歌詞を読んだりすると、作詞には人生の経験値もやっぱり必要だなと思います。いろんなことを経験することが大事だなって。
ーー経験を重ねるごとにより深みが出るということですね。
ChouCho:そうですね。書けば書くほど成長しているなと、自分でも実感します。もちろんその時に書くからこその感性や良さもあるのですが、それを前提にしたうえで最初のころに書いた歌詞よりも、最近書いた歌詞のほうが、自分では良い歌詞が書けていると思います。書けば書いたぶんだけ返ってくるので、その点でもやりがいを感じますね。
ーー自分に期待が持てるし、だからもっと知りたいと思う。
ChouCho:書いている時は、大変なんですけどね(笑)。
ーー次にカップリング曲の「hide and seek」ですが、これはサウンド的に、今までやっていなかったものにチャレンジしていますね。
ChouCho:はい。カップリング曲はタイアップがないので、毎回新しいことにチャレンジしています。今回は、R&Bっぽいサウンドで言葉数が多いメロを作ったことがなかったので、作ろうと思いました。R&B系は楽曲提供でいくつか歌ってはいるんですけど、それでもすごく少ないので。
ーーR&Bを聴いて研究して?
ChouCho:そうですね。今どんなR&Bが流行っているのか、主流なのか勉強して作りました。でもR&Bにくくられていても、サウンド感はすごくいろいろなので、難しいジャンルだなって思いました。
ーービートが独特で、R&Bはビートとかドラムの音に今っぽさが表れますよね。
ChouCho:確かにそうなんです。なのでそこは、アレンジャーの村山さんが、こだわって作ってくれました。メロが細かいので、ビートはタイトでクールにしたいと思っていて、私からはそういう方向性を示したみたいな感じで、細かい音色についてはおまかせしました。