BAD HOPが導き出した“オンラインライブの一つの正解” 映像やステージセットなど演出のポイントから考察

 ここで、もしこれまでにBAD HOP以外で何かオンラインライブを視聴した経験があるならば、当時の視聴時の自分自身を思い出してほしい。もううすうす感じてはいないだろうか。画面内の映像に変化が乏しいと、集中力が切れる瞬間が生まれ、気づけばスマートフォンを触っている自分がいることに。

 翻って、BAD HOPのステージは、90分間のうちに何度もセットが切り替わるアトラクション的な要素を備えているため、観ていても飽きがこない作りとなっている。つまり、画面に映るシーンの連続が長時間の視聴に耐えうる強度を保っているのだ(勝手なイメージだが、一般的なオンラインライブに対して、YZERRは特に「長くね?」などと言いそうではないだろうか)。なおライブ終盤には、これらの演出・監督・編集はすべて、YZERR「ZION」のMVを手掛けた堀田英仁が担当したと明かされている。

 そんなことを考えていたら、ライブ終盤の「Kawasaki Drift」でついにメンバー全員が集結。思えば、ここまで8名全員が一斉に登場するシーンはなかったが、そのせいで物足りなさを感じることもなかったし、だからこそ、全員が揃ったパフォーマンスの説得力は桁違いだった。何より、全員がこの数カ月を通して、各々のスキルやスタミナをアップデートしていたのは、視聴者が一番に感じたところだろう(特に、Barkは音源ではブレスを挟んでいたフレーズも一息で繋げて歌い切るなど、明らかな成長を感じられた人物だ)。最新のBAD HOPによるショーケースとして、これ以上ない内容だったに違いない。

 Benjazzyは冒頭、「俺らを止めれば、余計に暴れるだけだぜ」と宣言していたが、BAD HOPはコロナ禍においても“アイデア勝ち”で一手も二手も先を進むクルーだった。彼らの言う“オンラインライブの正解”は、生ライブの“代替手段”ではなく、映像だからこそ“代わりのきかない”ステージを披露することだったのである。そんなシンプルに“面白い”と思えるコンテンツを届けられることが、BAD HOPが多くの支持を勝ち取る何よりの理由なのだろう。

"BAD HOP WORLD" Release Online Live

■一条皓太
出版社に勤務する週末フリーライター。ポテンシャルと経歴だけは東京でも選ばれしシティボーイ。声優さんの楽曲とヒップホップが好きです。Twitter:@kota_ichijo

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