『Antelope』インタビュー

三浦大知が語る、ニューシングル『Antelope』誕生の背景 今この時代を生きる全ての人に届けたい愛

ダンスで全部を吹き飛ばすような曲があってもいい

――シングルの2曲目には、今年6月に配信リリースされた「Yours」が収録されています。この曲では「それぞれの人生に命を燃やして強く立ち向かっている」ことを表現したそうですね。

三浦:歌詞の通りです。もう人生、(先が)読めないじゃないですか。その中でどうしていくのかは本当に自分自身でしか決められない。だから、自分で決めさせてよっていうことです。誰かが自分の人生を決めるものではないという。

――いつ頃に書いた曲ですか?

三浦:Black Lives Matter(以下、BLM)の問題が広がり始めた時です。

――今年5月頃ですかね。BLM運動が着想のヒントになった?

三浦:めちゃくちゃなっています。一番のきっかけがコロナ、二番がBLMという感じ。

――BLMをどう感じていたんですか?

三浦: BLMは自分が語れるような、簡単な問題ではないし、アメリカの政治や歴史も含めていろんなことが作用しているので。これは個人的な見解ですけど、命が大切なことだけはわかる。だけど、この話をすることで政治的な発言をしたと受け取られるのが、ちょっと気持ち悪いな、変だなと思っていたんです。アメリカの政治や歴史などを全部知っているわけじゃないから、いろいろ見て勉強しようとはしていますけど、命は大事、命は尊いものだということはわかる。命が大事なんだから、命を大切にしたいと思った人が別に声をあげてもいいじゃんっていう気持ちがすごくあったんです。だから、その命の話ができればいいなというところはありましたね。

――ということは、サビの歌詞から書き始めたんですか?

三浦:いや、1番の頭から書き始めました。本当に何が起きるかわからないのが人生だよねっていう。その中でいろんなチョイスをしていくのは自分自身だし、どんな状況にいたって自分が選択していくんだという。誰かに奪われていいものではない。そういうことを歌えたらいいなと思ったんです。

――この曲のトラックもUTAさんが手掛けていますが、どういう発想から作っていったんですか?

三浦:UTAさんと作るときは、「最近どんなのやりたいですか?」みたいな話から作ることが多いんです。UTAさんって、月に何十曲作ってるの? っていうくらいむちゃくちゃ忙しいんですよ。本当に色々なオーダーや案件を抱えているので。だから、僕と作るときはUTAさんが作りたいものを作って欲しいんです(笑)。三浦大知という遊び場に来た時は「何か作りたいのあります?」って。

――俺を使って遊んでくれ、みたいな。

三浦:そう。何でもいいから、UTAさんがその時思ったことが音になって出てきたら僕が思いっきり乗っかって「それは面白いですね」とか「ああでもない、こうでもない」ってやるのが楽しくて。この時も、そういうテンションで作っていった記憶があります。

——そのときにアップな曲とか、踊れる曲みたいなことは言ったんですか?

三浦:そういうのがあってもいいんじゃないかと思ってる、という段階からUTAさんとリモートで話をしてましたね。「Be One」とか「ねがいぼし」とか、バラードが続いていたから、何かダンスものもいいね、みたいな。「こういう時期だからこそダンスで全部を吹き飛ばすような強いメッセージがこもった曲とかあってもいいと思うんですよね」と話をしたら、「いいね。おもしろいね」となって。そんなレベルの会話だったような気がします。あとは現場に行って、さっき話したような感じで作っていきました。

――「Yours」のコレオビデオは、どのようなテーマ、イメージで作ったんですか?

三浦:「この曲で三浦大知はどういう風に踊るんだろう」って、みんな想像を膨らませると思っていたので、当初からコレオビデオを作りたいなと思っていたんです。

三浦大知 (Daichi Miura) / Yours -Choreo Video-

――あの廃墟で踊ったダンスは自身で振り付けしたそうですが、どんな感情を表現したかったんですか?

三浦:命を燃やしてやっている感じがしっかり出ればいいなと思っていました。だから、ドキュメンタリーのように撮れるほうがいいなと思って。

——自分の世界に入り込んでいる感じ?

三浦:誰にも見られていなくても踊っているというか。このダンスはもう自分のものだっていう感じを出したくて。だから、音が止まっても踊っている。曲を作ったときから、「これはもう音が止まっても踊ってるだろうな、俺は」と思っていたんです(笑)。そういう何にも左右されない感じというか。「音が止まろうがなんだろうが、俺はここで踊るぞ」という決意みたいなものが見えるといいな、と。

――3曲目の「Not Today」は、NHKアニメ『アニ×パラ』車いすバスケットボール編のテーマソングになっていますが、そのオファーから作ったんですか?

三浦:そうです。車いすバスケの映像を色々見させてもらって、結構ぶつかったりとか転んだりとかして、激しくてエモーショナルな熱いスポーツだなと思って。バスケットの一番好きな瞬間は、ティップオフの場面なんです。ボールが上がって、両チームの選手がボールを取り合う。「ついに始まるぞ」って、お客さんも選手もそこに向かって集中するあの瞬間。

――息を呑む感じがあって。

三浦:そう。あの瞬間がこの曲で表現できたらいいなと思いました。会場は興奮の渦に包まれているのに、興奮の中に訪れる静寂というか。

――一瞬の静まり。

三浦:それが混ざりあっている瞬間というのは、アスリートが持つ精神性にもすごく近いんじゃないかと思って。アスリートじゃないのでわからないですけど、自分が思うゾーンは、震えるほどの興奮と、そのときの心臓の鼓動が1個1個数えられるくらいの冷静さが共存したとき。それがゾーンへの道だと思うんですよね。だから、その感じを曲に込められたらおもしろいな、と。

(Photo by 池村隆司)

――ティップオフの場面を想像して歌詞を書いていったんですか?

三浦:そうです。その時に、どんなセリフを言ったらかっこいいかな、みたいな(笑)。選手がどんなことを思っていたらかっこいいかと考えたときに、相手選手に、「俺、負けるの、今日やめとくわ」と言うシーンが思い浮かんで、それで「Not Today」にしました。「負けるのは今日じゃない」「負けるの、今日やめとくわ」っていう(笑)。

――トラックはどのように作っていったんですか?

三浦:これはUTAさんとSUNNY BOYさんの3人で爆笑しながら作ったんですけど。とにかく激しさが欲しかったので、「もうちょっとノイジーな感じがいいですよね」と話しながら作っていたら、まるでラスボスが第2形態になるときに鳴るBGMのようなトラックができて。このBGMで出てくる敵は絶対強いじゃん、って。

――ラスボスの、しかも第2形態(笑)。

三浦:1回倒したと思ったあとに出てくるヤツです。3人ともゲーム好きだし、このBGMを背負って出てきた選手には敵わないぞって(笑)。「こいつ、覇者感がハンパない」みたいな。3人でキャッキャ言いながら作ってました(笑)。

——今回の映像付きのCDには「Antelope」のMVも収録されます。MVはどのようなテーマで撮影したんですか?

三浦:コンセプトは人の重なりです。ビル群の映像は人の気配みたいなものが重なっていることを表現したかったから。バラードですけど、ダンサーと踊るところもあるので、そこも見どころかなと思います。

——では、今回のCDの聴きどころを挙げると?

三浦:「Yours」は先に配信していますけど、このシングル用にミックスし直しているんです。やっぱりそれは「Antelope」と「Not Today」との3曲になったときの流れがあるので。単体とは違うミックスになっているので、そこを聞き比べてみるのもおもしろいと思いますね。

三浦大知 (Daichi Miura) / Antelope -Music Video-

■リリース情報
三浦大知
ニューシングル
『Antelope』
2020年11月11日(水)発売

CD+Blu-ray(AVCD-98012/B)¥1,980(税込)
CD+DVD(AVCD-98011/B)¥1,980(税込)
CD ONLY(AVCD-98013)¥1,000(税込)

<CD>> ※全3形態共通
1. Antelope
2. Yours
3. Not Today

<DVD / Blu-ray>全2形態共通
1. Antelope -Music Video-
2. Yours -Choreo Video-

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