後藤真希、『テレ東音楽祭2020秋』出演で“ゴマキ再評価”の熱高まるか 新たなアイドル像を築いたモー娘。時代振り返る

矢口のことを「知さん」と間違えた後藤の天然っぽさ

 後藤は男性ファンだけではなく、同性からの支持も高かった。指原莉乃や柏木由紀(AKB48)ら後藤をきっかけにアイドル好きになったという女性タレントも多い。

 つんく♂は自著『一番になる人』(2008年)で、商品をヒットさせるためのターゲット層について「クラスに一人か二人しかいない、おしゃれな中学二年生の女の子をどうつかまえるか、なのです」とし、「おしゃれな中学二年生の感性をもっている人は大ヒット作品をつくれる可能性をもっているのです」と書いている。

 13歳ながら自分のスタイルを貫いていて、大人びているそのイメージ。さらに人気上昇中のアイドルグループにたったひとりで加入し、安倍なつみとダブルエースを張るというストーリー。背伸びがしたい年頃の同年代の女の子たちにとって、後藤はまさに憧れの存在として映ったのではないか。さらに彼女はデビュー当時、まさに中学2年生。つんく♂の指摘とぴったり当てはまる。つんく♂自身、後藤の成功は持論をより深めるものになったはず。後藤の人気の根強さを紐解く上で重要な部分と言える。

 2002年にモー娘。を卒業し、翌年に発表したソロデビュー曲「愛のバカやろう」(2003年)も、とても大人な内容だった。15歳の少女が〈本当の恋 わからぬまま あなたとは あれで終わるの?〉と歌い出し、さらにサビで〈あなたがいたから 生きてこれたのに〉と訴えかける。著書『今の私は』では、「その内容を十分理解するには、15歳はまだ経験が足りなかった」と語っているが、楽曲のテイストにあわせて表情を何とか作ろうとする姿など、模索しながら歌っている様子はグッと引き込まれるところがあった。

 大人っぽさの一方で、天然で無邪気なところも魅力となる。メンバーのことをよく知らないままモー娘。に加入し、矢口の名前を見て「知さんって誰?」と読み間違えたエピソードは、後藤語録でも有名だ。モー娘。での握手会開催時には、そういった飾らない面がファンの前でもあらわれ、「意外と普通の子」と見た目とのギャップがウケた。加入していきなりセンターを陣取ったことからアンチもいたが、そんな素顔が少しずつファンの印象を柔らかいものへと変えていった。

 『テレ東音楽祭2020秋』以降、彼女がどんな芸能活動を展開するのかはまだ分からない。ひとまずここは、久しぶりに「アイドル・後藤真希」をテレビで堪能したい。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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