04 Limited Sazabys GENに聞く、“生のライブ”に懸ける思い 『YON FES』中止から『YON EXPO』開催に至るまでの舞台裏

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、あらゆるイベントやライブ開催の自粛がやむを得なくなった2020年。例年であれば“春フェス”や“夏フェス”で湧く季節も異例の静けさと共に過ぎ去っていったが、9月11日には国からイベントの人数制限緩和が発表され、徐々に客入りライブを行う事例も増えつつある。そんな中、04 Limited Sazabysが、今年11月28日と29日に『YON EXPO 2020』を開催することを発表した。

 フォーリミは、1月にスタートしたツアー『MYSTERY TOUR 2020』の一部公演、4月に予定していた自主企画フェス『YON FES 2020』も止むを得ず中止に。本来であれば『YON FES 2020』にて、GENの難聴に伴いバンドの活動休止の発表を予定していたという。

 本インタビューでは、『YON FES 2020』の中止から『YON EXPO 2020』開催に至るまでの経緯をはじめ、コロナ下の中で葛藤したライブバンドとしての選択、ドキュメンタリー『04 Limited Sazabys Documentary “Terminal”』で描かれた活動休止の背景について話を聞いた。(編集部)

『YON FES 2020』をもって活動休止を発表する予定だった

04 Limited Sazabys GEN

ーー新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、エンタメ全体の動きやアーティストの活動が制限され始めてから約半年ほど経ちます。04 Limited Sazabysとしても、今年の1月からスタートした『MYSTERY TOUR 2020』の2月28日公演以降の6本、さらに4月開催予定だった『YON FES 2020』が止むを得ず中止となりました。もともと決めてあったであろう1年の予定も全体的に見直しが必要になったかと思いますが、その状況をどのように受け止めていましたか?

GEN:僕らはもともと『YON FES 2020』をもって活動休止を発表する予定だったんです。なので、そのお休みが少し前倒しになったような感覚でしたね。『YON FES 2020』が中止になったことで活動休止の発表ができなくなったんですけど、そもそもこんな悲しい状況の中でネガティブなニュースを出すのもどうなんだろうかという話になり、発表はしないでおこうと決めたんです。不幸中の幸いではないですが、活休もあって僕らは夏にツアーやフェスの予定を入れていなかったのでそこまでうろたえることはなかったんですけど、やっぱり僕らはライブハウスシーンの中で活動してきたバンドで。その愛すべき場所や自分たちのライブを支えてくれるスタッフの方々の生活に対する心配がありました。

ーー自身のことよりも、まずはシーン全体やライブハウス、各所の関係者スタッフに対する憂いが先に浮かんだんですね。

GEN:はい。特に僕らと一緒にライブを作ってくれている方々は、現場至上主義のプロフェッショナルばかりなので、ライブがなくなってしまったら仕事はどうなってしまうのだろう、と。それに僕らは特別メディアから出てきたわけではなく、ライブハウスやフェスでお客さんを掴んできたタイプです。本来であれば今年は休むつもりでしたけど、こういう事態がこのまま続くようであれば、バンドとしての活動の仕方も見直さなければならないと思いました。

ーー活動休止は、こういう状況になる前から考えていたんですよね?

GEN:そうですね。昨年末ぐらいには決めていました。僕の健康上の問題なんですけど、去年の夏頃から難聴になってしまって。ただ、発症の時点で『YON EXPO』(2019年9月開催)も決まっていたので、とりあえずそこまでは頑張らないとと思っていたんです。ただ、そこから冬フェスの出演や大事な先輩のイベントに誘われる中で、僕も『YON FES 2020』までやらなきゃなという気持ちになってきて。発症からは悪化と回復を繰り返しながら、だましだましなんとかやってきた感じでした。

ーー難聴が発症した際はパニックになったのでは?

GEN:本当にきつかったですね。僕はライブをすることが大好きなので、一番好きなものを奪われる感覚というか。何を聞いても気持ち悪い、無音になっても耳鳴りがうるさくて、めまいも起きるようになってしまって。むしろ、一番好きなライブが嫌いになるんじゃないかって思った瞬間もあって、これまでにないくらい落ち込みました。

ーーそこからメンバーの方とも話をされて、活休を決めたと。

GEN:はい。メンバーもスタッフも、活休したいという要望を快く受け入れてくれて。「こういう形で活休したらいいんじゃないか」と話し合う中でも、僕の意見を常に尊重してくれました。

配信で自分たちの100%の魅力を伝えるのは難しい

ーーただ、2020年はコロナウイルスに伴い、ツアーの後半戦が中止になり、先ほどのお話にもあった通り前倒しでお休みが訪れる形になった。その『MYSTERY TOUR 2020』は、対バンゲストを開演までシークレットにするというチャレンジングなツアーではありました。改めてこのツアーをどのように振り返りますか?

GEN:フェスにも言えることですが、自分のことを知らないお客さんをいかにノックアウトしていくか、みたいなものって全バンドマンのテーマだと思うんです。『MYSTERY TOUR』は、お客さん側からすると開演まで誰が出てくるのかわからないし、事前に予習もできないので先入観を持たずに音楽を楽しむこともできる。やっぱり初めましての出会いがお互いにとって一番面白いと思うし、そんなアウェイな状況の中で百戦錬磨の先輩方がどう勝負していくのかを見られたことは、主催側としてもすごく面白かったです。僕らとしては豪華なメンツに声をかけたので何の不安もないんですけど、出る側としては「俺らで本当に大丈夫か?」みたいなプレッシャーを意外と感じていたみたいで(笑)。そういうところを含めて、バンドマンの1番バンドマンらしい姿を見られたことが嬉しかったです。

ーーファンからしても、フォーリミがセレクトしたアーティストは絶対間違いない、みたいな安心感があるのかなと思います。それこそ『YON FES』でブッキングするアーティストが常に期待を上回ってくるので、そういう信頼があるのかな、と。

GEN:お客さんも僕らを信頼してくれていると思いますし、僕らもお客さんを信頼しているからできたことなのかなって。そこの信頼関係は、ライブやフェスを通して一緒に育ててきた感覚はありますね。情勢的に中止せざるを得ない状況だったので仕方のないことですが、やっぱり最後までやり切りたかったなという気持ちは大きいです。お客さんや対バンアーティストの反応を見ても、本当に良いリアクションが返ってきていたので。

ーー本来であればツアーを完走して、そのまま4月に『YON FES 2020』が開催される予定でしたが、3月26日に開催の延期、その後中止を発表されました。その決定に至るまではどのようなやりとりが行われたのでしょうか。

GEN:僕としては、やらないという選択肢はない、というスタンスだったんです。実現に向けて、どうすれば出来るのかを常に考えていました。活動休止の発表が控えていたこともありますが、そもそも会場のモリコロパークで開催するのが2020年で最後になるかもしれなかったので、どうしてもやりたかったんです。

ーー「ジブリパーク」の建設予定地ですもんね。早ければ来年に工事がはじまるかも、という。

GEN:それと、世の中の風向きを変えたいという気持ちもありました。しっかり感染対策をして、僕らが無事開催できれば、後続のフェスやライブもやりやすくなるかもしれない。みんなのお手本になれればと。ただ、コロナ=人が死んでしまう病気となった時に、自分たちのリスクの範疇を超えているんじゃないかと考えるようになって。僕個人が矢面に立って批判されることはまだしも、もし感染者が出てしまった時に、日本の音楽シーンやライブハウスにとんでもない打撃を与えてしまうんじゃないかと思って。でも、中止が決まるまでは、スタッフとはずっと対策の話をしてましたね。

ーー具体的には、どんな話し合いが行われたんですか?

GEN:例えば、2日間を1日に集約して人数を減らして開催するとか、無観客で配信するという案もありました。ただ、仮に1日に集約するとしても、『YON FES』は僕らだけのイベントではないので、出てもらうアーティストを選ばなければならない。そこでも『YON FES』に馴染みの人に出てもらうのがいいのか、逆に今年初めて出てくれるアーティストを中心にするのか、そもそもセレクトするという行為自体がどうなんだろうという考えもありました。実際、出演を決めていたアーティストの誰からも辞退の連絡がなかったんですよ。僕らがやるなら、自分たちも出るというスタンスで。僕が本気で言ったらきっとこの人たちは出てくれるのだろうけど、そこに巻き込んでいいのか、という葛藤も繰り返しありました。

ーー今では、無観客でのオンラインライブが主流になりつつあります。それでも中止を選択したのはなぜでしょうか。

GEN:いくつもの案の中でも、無観客で配信するのだけは僕的には違うと思っていました。一度だけ、僕らも配信ライブをやらせてもらったことがあったんですけど、これはライブであっても、僕が考えるライブではないと感じたんです。これまで行ってきたライブすべてに言えることですけど、やっぱりお客さんがいて、一緒にその日1日を作っていくという感覚がライブにはあって。お客さんと僕らの生み出す空間に熱があって、そこに付随するドラマがあるものだと思うんですけど、そういう意味では僕らがカメラの前でライブをやっても、普段のように輝ける気がしないというか。そんな意識の中で、仮に『YON FES』を配信したとしても、きっと僕らが納得いく形にはならないだろうなと。

ーーそこは、フォーリミのライブに対する美意識なのかもしれませんね。とはいえ、決してオンラインライブを否定するというわけではないですよね?

GEN:もちろん否定的な考えはないです。配信にフィットするアーティストもたくさんいると思うので。ただ、ずっと現場や生の音にこだわってやってきた僕らにはハマらなかっただけであって。きっと、いくらいい音が出ても、画面が鮮やかに映っても、本来のライブ空間にある熱量って画面の向こうには届かないと思うんです。暑い、苦しい、酸素が薄いみたいな臨場感が僕らは大好きだし、配信で自分たちの100%の魅力を伝えるのは難しい。そうなると尚更、それを他のバンドに求めることも違うのかなと思いました。

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