ドレイク、ナイーブなリッチマンはどこへ向かう? 新曲「Lough Now Cry Later」に滲むスタンスの変化

 8月14日に、カナダ・トロント出身のラッパーDrakeが新曲「Laugh Now Cry Later」をリリースした。「今は笑って、後で泣く」と訳されるタイトルのこの曲は、シカゴ出身の若手ラッパー・Lil Durkがフィーチャリングで参加し、プロデュース陣には、DrakeもフィーチャリングしたTravis Scott「SICKO MODE ft. Drake」やShelley FKA DRM「Broccoli (feat. Lil Yachty)」など、近年のラップソングの代表曲の数々を手掛けているRoget Chahayedをはじめとする、豪華なメンバーが参加した楽曲である。

Drake - Laugh Now Cry Later (Official Music Video) ft. Lil Durk

 一昨年、前作にあたるアルバム『Scorpion』でストリーミング記録を塗り替えるヒットを記録し、今年に入ってからもFuture、PartyNextDoorPARTYNEXTDOOR、Lil Yachty、Popcaanなどのニューアルバムに参加すると同時に、自身もミックステープ作品『Dark Lane Demo Tapes』をすでにリリースしているDrake。今年の上半期だけでも様々な音楽を発信し、ヒットを外さない彼がリリースした今回の曲は、今年中にリリース予定のニューアルバム『Certified Lover Boy』の収録曲でもあることも明かされている。依然として勢いの止まる気配のないDrakeの待望のアルバム作品はどういったものになるのか。今回先行リリースされたこの曲でその片鱗と彼のアーティスト性が見えるかもしれない。

あまりにも贅沢なミュージックビデオ

Drake「Laugh Now Cry Later」

 「Laugh Now Cry Later」がリリースされた際、同時に公開されたMVも一気に話題となった。Kendrick Lamar「Humble」や、Billie Eilish「bad guy」などのMVを手掛けてきたDave Myersが監督をしたこのMVは、リリースから6日が経った8月20日の時点でYouTubeで3357万回再生を記録している。これは例えば同じく今年リリースされた他のDrakeのMVと比べてみるとわかりやすい。リリースから4カ月ほどが経った「Toosie Slide」のMVは現時点で2億回再生、リリースから5カ月ほどが経った「”When To Say When” & ”Chicago Freestyle”」のMVは4261万回再生。コロナウイルスによる世界的なロックダウン期間にドロップされ、今年のポップソングの中でもトップレベルにバズッたといっても過言ではない「Toosie Slide」にはさすがに及ばないものの、短期間で急激に再生回数が伸びているのは一目瞭然だ。

 これほどまでに短期間で再生回数が伸びたのは、Drakeの新曲であるというだけでなく、ナイキ本社で撮影したという話題性によるものでもあると考えられる。これまでにも、スニーカーなどでナイキとコラボレーションしてきたDrakeではあるが、ナイキの本社が贅沢に広々とロケーションされたことは、このビデオの注目すべきポイントだろう。さらに、DrakeやLil Durkはもちろん、NBA選手のKevin Durantやアメフト選手のMarshawn Lynchなど多彩なアスリートたちも顔を出しており、彼らとDrakeの共演も見どころとなっている。

 もう一つ特徴として言えるのは、最新型のベンツを乗り付ける登場シーンや、ナイキ本社のカンパニーストアでショッピングをするシーンなどが象徴するような、成功者、スーパースターとしてそのリッチさを見せつけるDrakeの姿だ。彼が現行のラッパーの中でも頂点をとっており、明らかなリッチマン、スーパースターであるのは誰の目にも疑いようのないことではある。しかし、彼自身が「稼いでいる自分」を意識的に見せつける姿を見ると、彼の単純ではないアーティスト性のことを改めてどうしても考えてしまう。

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