ミニアルバム『GARDEN』インタビュー

早見沙織が語る、『GARDEN』で再確認した音楽創作の原点「自分の音楽が誰かの救いだったり、癒しになれば嬉しい」

「Akasaka5」はキャラソンとアーティスト楽曲の中間的な存在

早見沙織「やさしい希望(Bossa Nova)」試聴動画

ーー3曲目は「やさしい希望(Bossa Nova)」。デビュー曲のボッサバージョンで、ライブでは披露してきたアレンジですね。改めてこのタイミングで収録した理由は?

早見:ちょうど5年前の8月12日に「やさしい希望」をリリースしていたこともあって、8月12日には何かをやりたいと思っていたんです。そこで、ライブではいっぱい歌ってきたけど、まだ収録は全然したことのないバージョンを形にするのがいいんじゃないかなと思い、今回収録し、8月12日に配信することになりました。

早見沙織「Akasaka5」試聴動画

ーーそこから「Akasaka5」に続くわけですが、これは歌詞のモチーフもすごく具体的で、情景が浮かぶような曲です。

早見:これは1年以上前に、詞先で作った曲なんです。日々感じたことだったり、思いついたことをメモしておくiPhoneのメモがあるんですけど、そこにこの曲の原型を書いたのが2018年のことで。『GARDEN』が5年間を踏まえてのミニアルバムになるということだったので、せっかくだからこれまでのメモからも1曲作れたら楽しいなと思って、収録することに決めました。

ーーこの曲は、ボーカルがこれまでの楽曲と少し毛色が違うなと感じました。いわゆるキャラソンを歌っている時の早見さんと、いつものアーティスト活動で歌っている時の早見さんの、ある意味中間的な印象というか。それって、昨年10月にキャラソンを交えた企画ライブ『早見沙織 Special Live 2019 ”CHARACTERS”』をやったことが大きいのではないか、と思ったのですが。

早見:それはあると思います。あえて意識したわけではないですが、楽曲のアレンジを何回かやりとりしていた時に、1回目のアレンジではキャラソン感が強いなと思って、楽器の音色を少し変えていただいたりしたんですけど、楽曲の持つ雰囲気や歌詞の感じを考えたときに、がっつり歌い上げるよりはセリフっぽく思ったことをポツポツ言っているように歌う方が合うのかなと思って。そう言われてたしかに、と思いましたが、キャラクターソングとアーティストとして発表している音楽の中間、つなぎ目になってくれるような存在なのかもしれませんね。

ーーアレンジに関しては、ライブで演奏するならアップライトベースが出てきたり、バンジョーが入っても気持ちよさそうな“カントリーっぽさ”を感じました。

早見:頭のイントロの雰囲気や、間奏からDメロにつながって流れがちょっと変わる、みたいな構成は、デモの段階からはっきりとあって、そこをアレンジャーの清水哲平さんにうまく活かしていただきました。自分の手のひらから生まれた曲でありながらも、どう演奏するか、どうライブで見せるかによって、雰囲気や見え方が変わる曲なのかもしれません。

ーーあと、早見さんの楽曲の中で言うと、トップクラスに腰の位置が高い曲、という印象も受けました。基本的に早見さんの曲は重心が低いイメージがあったので。

早見:ああ、たしかにそうかもしれません(笑)。

自分の音楽が誰かの救いだったり、癒しになれば嬉しい

早見沙織「glimmer」試聴動画

ーー5曲目の「glimmer」は、MONACAの岡部啓一さんがアレンジを手掛けています。これまでも『セキレイ』などでご一緒されていますね。

早見:そうですね。作品でご一緒させていただいていて、いつか自分の曲でもと思っていたのですが、まさかこのタイミングで編曲していただくことになるなんて、と驚いています。

ーーこの曲は細やかなアレンジが印象的で、岡部さんがアニメで作る楽曲というよりは『[NieR]シリーズ』のような世界観に近いなと感じました。早見さんが作った原曲がどういう風にできていったか、それをどのようにアレンジしてほしいと依頼したのか教えてください。

早見:デモは深夜に一人で弾き語ったような音源でした。今回の収録曲だと一番古くて、テンポもすごく揺らぎがあったんですが、その不安定さを活かしたアレンジがすごくて。一つひとつ説明するのが難しいぐらい、私が伴奏で弾いていたピアノの部分を拾い上げて使ってくださったり、「ここの音、ここで入るんだ!?」という面白いアレンジの仕方に感動しました。依頼については、アレンジをしていただいた段階で「とってもささやかなんだけど希望がある楽曲」に聴こえたこともあり、『JUNCTION』の「interlude:forgiveness」という曲のコーラスワークが活かせるかもと思って、「間奏のところにそれを差し込んでください」とお願いしました。

ーー最後を飾るのが「ワンスモア」。これはライブでも披露した曲で、作曲は矢吹香那さん、編曲は矢吹さん&前口渉さんと、ずっと早見さんの活動を支えてきたお二人が参加している楽曲です。

早見:これは矢吹さんらしい「ハッピー&ラブ&ジョイ」みたいなノッてる感覚の曲ですね。歌詞は夜に書くことが多いんですが、この曲はお昼に書きたいと思って作った曲です。今回の作品のなかではボーナストラック的な位置づけになるんですが、聴いていただいた方には「また一緒の空間で、一緒の音楽を楽しめるといいよね」と明るく前向きに思っていただけるようなものになったと思います。

ーー最後に、今回の作品を完成させたことで、次への展開は見えてきましたか?

早見:『GARDEN』は特に、リード曲の「garden」を作った時に色々考えさせられました。皆さんがこの環境下で色んな状況に陥ったと思うんです。未来がどうなるかわからないし、自分がどういう風に生きていくようになるのかも全然わからない中で、自分の進む道を自分で決めていかなければならないという状況の方もいた。仕事を辞めた方もいれば、今のままで変わらない道を選ぶ人もいた。でも、どんな道に行くとしても、自分が一番いいと思って選んだものは、自分を確実に幸せにしてくれる選択肢なんだと思って、今回の制作に挑みました。

 「garden」は、そういう風に生きていく人たちの隣に寄り添うような音楽であってほしいと思って作りました。それがある種、自分自身の幸福論でもありますし、音楽で見据えるテーマ性にすごく近くなっていったというか。自分の楽曲を通して、誰かの救いだったり、癒しになれば嬉しいですし、いろんな状況にいる人の心に寄り添うような楽曲をどんどん作っていけたらいいなと思っています。それはただ底抜けに明るい曲や全力の応援歌ではなく、人間の多様な部分の一つひとつを切り取って、形にして、描いていって、それを聴いた人が前に進む力にしていただけるような音楽活動ができたら、こんなに嬉しいことはないですし、思春期とかの多感な時期に必死に生きていくうえで、人生の中に寄り添えるといいですね。10代~20代で抱えてた感情って、何歳になっても自分の中にずっと残ると思うので、そこを起点とした音楽を届けていく活動ができたらとても嬉しいです。

『GARDEN』
早見沙織『GARDEN』

■リリース情報
早見沙織
『GARDEN』
2020年9月2日(水)発売

【CD+Blu-ray盤】
税込価格:¥3,900
【通常盤】
税込価格:¥2,500

<収録曲>
M1. garden
作詞・作曲:早見沙織 / 編曲:冨田恵一(冨田ラボ)
M2. 瀬戸際
作詞・作曲:早見沙織 / 編曲:松本良喜
M3. やさしい希望(Bossa Nova) ※初レコーディング音源化
作詞:早見沙織 / 作曲:矢吹香那 / 編曲:増田武史
M4. Akasaka5
作詞・作曲:早見沙織 / 編曲:清水哲平
M5. glimmer
作詞・作:早見沙織 / 編曲:岡部啓一(MONACA)

<BONUS TRACK>
ワンスモア ※初レコーディング音源化
作詞:早見沙織・矢吹香那 / 作曲:矢吹香那 / 編曲:前口渉

<特典BD収録内容> ※すべて初BD化
1. やさしい希望(MV)
2. Installation(MV)
3. NOTE(MV)
4. 夢の果てまで(MV)
5. Jewelry(MV)
6. 新しい朝(MV)
7. Let me hear(MV)
8. Statice(MV)

「GARDEN」配信はこちら

■関連リンク
早見沙織 公式サイト
早見沙織 公式YouTube Channel
早見沙織 公式Twitter

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