3rdアルバム『maze』インタビュー(前編)
chelmico×長谷川白紙に聞く、初コラボ曲「ごはんだよ」で表現した“トラウマ” 「今までのリリックとは全く違う」
“占い”や“心理テスト”のようだった長谷川白紙との楽曲制作
ーー今回、そんな2組が楽曲「ごはんだよ」でコラボすることになった経緯は?
Mamiko:「ファンだからお願いした」の一言に尽きるんですよね(笑)。最初にテーマとしてあったのは「聴く人にトラウマを与える」ということだったんですけど(笑)。私が白紙さんの曲を聴く時にも、割とそれに近いものがあるというか。子供と大人の間を行き来しているような、不思議な感覚に時々陥るんです。なので、トラウマのような曲を作るのに是非とも協力してもらいたいと思って声をかけました。
ーー「トラウマ」をテーマに据えたのはなぜ?
Mamiko:今作を作り始める時、子供の頃の自分に聴かせたくなるアルバムを作りたいという気持ちがまずあって。その時に、小さい頃の曖昧な記憶のようなものを並べていったら面白いんじゃないかと。それをRachelに話したんだよね、「トラウマ、どう?」って。
長谷川:「トラウマ、どう?」ってすごいワードですね(笑)。
ーー白紙さんは、トラックをどんなふうに作っていったのですか?
長谷川:私は誰かから楽曲提供の依頼をもらったときには、その方の「要素」みたいなものを、とにかくたくさん収集するところから始めるんです。私が即興でどんどん質問していって、それに全部答えてもらうという非常に傍迷惑なことを、毎回やっているんですよね。
Rachel:あれ、毎回やってるんですか? ヤバイですね(笑)。
Mamiko:しかも変な質問なんですよ。「好きな金属は?」とか「好きなスーパーボールの大きさは?」とか。
長谷川:そうですよね。なんであんなこと聞いたんですかね。
Rachel:今までの人生でされたことのないような質問をすごくたくさんされた。
Mamiko:楽しかったけどね(笑)。
長谷川:そこで聞いたことが、作曲に直接インスピレーションを与えるとか、そういうわけではあまりなくて。私の精神を走らせるための「燃料」がいくつか必要で、その協力をしていただいている感じなんです。その人たちがどういうことを考えていて、こちらへの眼差しとか問いに対してどんな反射を返すのかとか、そういうことが楽曲提供の場合は重要だったりするんですよね。
ーーいわゆる「インタビュー」とも違いますか?
長谷川:姫乃たまさんに楽曲提供をした際(「いつくしい日々」)、同じことをしたら姫乃さんは「カウンセリングみたい」とおっしゃっていました。
Rachel:ああ、確かに。言われてみたら近いものがあったかもしれない。「心理テスト」に近いような。
Mamiko:私は「占いみたい」と思ったな。
Rachel:白紙さん占い師みたいだった。大きい紙を広げて、マインドマップみたいなのを描いたり付箋を貼ったりしてたよね。
長谷川:はい。それを持ち帰って、実際の曲作りに入る前にchelmicoの過去の楽曲を色々と分析しました。で、打ち合わせの時にいただいた「トラウマ」というテーマから、「こういう音楽の定型を持ってくるのはどうだろうか」みたいな試行錯誤を3日4日くらいは繰り返して。そこからようやく実際の曲作りに入っていき、鍵盤の前に座って弾きながら歌ってみたり、そこからビートを考えたりしました。当初は「ビッグバンドみたいに色んな楽器が入った曲」というリクエストをもらっていましたが、結果的に全然違う曲になっちゃいましたね(笑)。
ーー出来上がったデモを聴いたときに、お二人はどう思いました?
Mamiko:「そうそう、これこれ!」と思いました(笑)。「白紙さんっぽいなあ」って。これまでchelmicoがやってきたトラックとは雰囲気が全く違っていたので「ここからどうやっていこう?」とか一瞬思ったけど(笑)、実際にリリックを書き始めたら楽しかったですね。
Rachel:うん、楽しかった。
長谷川:よかったです。