サカナクションからUNISON SQUARE GARDEN、銀杏BOYZまで……バンドのこだわり感じたオンラインライブの名演

 ライブのコンセプトや趣旨自体がユニークな公演も実に魅力的だった。UNISON SQUARE GARDENはリクエスト投票を基にセットリストを組んだ。7月15日の公演では1〜30位の楽曲から選出。NHKホールで代表曲やファン待望の楽曲を中心に、スタイリッシュにショーアップされたステージを披露。一方、8月22日の公演は31位〜70位の楽曲が中心。代官山UNITでアコースティック編成や3人が向き合って演奏する別フォーメーションなどを交え、より臨場感溢れる映像を届けた。どちらの公演でも共通していたのは、ステージにいる彼らのいつもと変わらない姿だ。そもそもの前提として自分たちが鳴らしたい音楽を自由に鳴らすというスタンスがある以上、無観客の会場でもその芯はブレない。オンラインだろうと通常営業をやってのけてしまえる。ロックバンドとしての核を改めて証明するライブだった。

 羊文学は8月2日から8月16日にかけて全国流通した全楽曲を披露するオンラインツアー3公演を開催した。お世話になった人々や場所と共にこれまでの道程を振り返り、最後にメジャーデビュー曲を演奏して締めくくったこのツアーは単なる旧譜再現に留まらず、バンドの歩んできたストーリーを鮮明に届けてくれた。実際に開催するとなれば少ない公演数でしか行えないであろう催しを、全国に隈なく届けられるのもオンラインライブの強みだろう。

 Suchmosの全曲新曲ライブなど、実験的な試みを行ったバンドも多い。そんな中、銀杏BOYZが行った全編スマホ撮影でのライブは斬新な画力があった。峯田和伸の剥き出しの表情を接写で捉え続け、楽曲の気迫と連動して次々切り替わるカメラがバンドメンバーの演奏を勢いよく映し出す。ノイズや割れんばかりの音が現場の熱気を想起させ、粗い画質の映像の中にはありありとしたバンドの姿が刻まれていた。高音質や高画質とは逆方向に振り切った配信だが、故に手触りや温度感、混沌とした会場の空気を収めることに成功した好例だ。

 オンラインライブは、その場で発せられる音を全身で浴びるというリアルなライブが持つ最大の魅力を再現するのは難しい。しかし細部までこだわった選曲や演出、バンドの見せたい姿を存分に提示できる点など、オンラインだろうと損なわれないポイントも多くある。さらにリアルで見せることが難しい現状を逆手に取って、斬新なアイデアや創意工夫を持ち寄り新たな表現を獲得しようとしている最中なのだ。リアルなライブが一刻も早く復活すること願うと同時に、オンラインライブも1つのアウトプット先として進化をし続けて欲しいと思う。

■月の人
福岡在住の医療関係者。1994年の早生まれ。ポップカルチャーの摂取とその感想の熱弁が生き甲斐。noteを中心にライブレポートや作品レビューを書き連ねている。
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