[Alexandros]、初のリモートアルバム『Bedroom Joule』で挑んだ楽曲構造の変化 ベッドルームミュージックの潮流とのリンクも
メンバーそれぞれがサウンドメイキングを担当していることで方向性の幅も生まれている。磯部寛之(Ba/Cho)がディレクションした「Thunder (Bedroom ver.)」はバウンスするグルーブに焦点があたり、白井眞輝(Gt)による「月色ホライズン (Bedroom ver.)」は唯一の弾き語り。そして「city (feat. Pecori)」は、新作の中でも最もローファイヒップホップに接近した1曲だ。踊Foot WorksのPecoriを迎え、彼が大胆にリメイクしたメロウなトラップビートの上でラップと歌が絡み合う。「真夜中 (Bedroom ver.)」も、まさにローファイミュージックのテイストのど真ん中のアレンジがなされている。
分厚いコーラスとエレクトロニカ的なビートとシンセが壮大な風景を描き出す「pr」は、こうした制作を経て彼らが掴んだ方法論を昇華したような1曲だろう。そして新曲の「rooftop」は、募る思いを描いた歌詞も含めて、こうしたサウンドメイキングのセンスとコロナ禍の時代性が一つモチーフとなって結実したようなバラードだ。
また、こうした新作のテイストからは、ここ最近の海外のポップミュージックの傾向とリンクするような感触もある。
たとえば、やはりコロナ禍でリモート制作されたテイラー・スウィフトの新作『folklore』は、これまでのポップな路線からは一転した内向的で親密な作風だ。また、もともとベッドルームで兄・フィニアスと楽曲を作ってきたビリー・アイリッシュが発表した新曲「my future」も、繊細でメロウな響きが宿っている。
また、これまでYouTube上のプラットフォームやプレイリスト文化から広まったがゆえに匿名的なトラックメイカーが多く活躍していたローファイミュージックのシーンにおいても、今年に入ってPowfu「death bed (feat. beabadoobee)」のようなグローバルなヒット曲が生まれたりもしている。
そういう世界的な潮流の中で、日本のロックバンドがどういった表現をするのか。『Bedroom Joule』の作風にはそういうテーマも見出すことができる。とても興味深い。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」/Twitter
■リリース情報
[Alexandros] アルバム『Bedroom Joule』
8月26日(水)CDリリース
・通常盤(CDのみ)¥2400(税抜)
・初回限定盤(CD+DVD)¥3,600(税抜)
・初回限定盤(CD+Blu-ray)¥4,600(税抜)
※配信中/ダウンロードはこちら
<収録曲>
01.ar
02.Starrrrrrr (Bedroom ver.)
03.Run Away (Bedroom ver.)
04.Leaving Grapefruits (Bedroom ver.)
05.Thunder (Bedroom ver.)
06.月色ホライズン (Bedroom ver.)
07.Adventure (Bedroom ver.)
08.city (feat. Pecori)
09.pr
10.rooftop
11.真夜中 (Bedroom ver.)
※M-01、09、11はCDのみ収録
<初回限定盤収録特典映像>
Secret Live
01.Starrrrrrr (Bedroom ver.)
02.Run Away (Bedroom ver.)
03.Leaving Grapefruits (Bedroom ver.)
04.Thunder (Bedroom ver.)
05.月色ホライズン (Bedroom ver.)
06.Adventure (Bedroom ver.)
07.rooftop
<予約購入特典>
予約者先着でミニステッカーをプレゼント