新星シンガー Nazに初インタビュー ロンドンで受けた刺激、自身の音楽への理想を語る

「新しくて自分に正直な作品を作りたい」

ーー早速新曲の「7-Knife(切)」が配信リリースされました。これはいつ頃から制作に入ったんですか?

Naz-「7-Knife(切)」 Lyric Video

Naz:実は「7-Knife(切)」は高校生の時に書いた楽曲で、『JUQCY』(2019年の1st EP)をリリースした後、ロンドンに行く前に冨田さん(冨田ラボ)にアレンジをお願いしていました。

ーー結構前なんですね。

Naz:そうですね。ちなみにタイトルの「7-Knife(切)」は7つの刀という意味ではなく、“切ない”という言葉からつけています。「切」という漢字をみたときに、「七」と「刀」でできていることに気がついたんです。そして、7-Knife(切)という名前をつけました。

ーー“切ない”という感覚は楽曲の寂し気な音色に出ているように思いますが、歌詞には不安を抱きつつも未来に向かっていく意志が書かれているように感じました。

Naz:母親が「やりたいことは絶対にできる」とずっと信じさせてくれていたのですが、私のやりたい事の中には他の人からすると現実味のない夢のような事もあります。ただ、前をみていられるようにはしているのですが、日々を過ごす中で自分のダメなところが見えてきて、不可能なんじゃないかと思う日もよくあって。そんな不安を抱えながらも前に進んでいけるように、自分自身にその気持ちを思い出させるような曲にしたいと思いました。

ーーサウンドは、『JUQCY』は内省的な雰囲気が強かったと思いますが、本作はダイナミックで、広い空間で聴きたい音色になったと思います。

Naz:『JUQCY』は歌声を聴かせる曲が多かったこともあり、リリースした時点から、次に出す楽曲は音の面で変わっているものというか、良い意味で“変なもの”を作りたいと思っていました。『JUQCY』収録曲の「Clear Skies」と「OCEAN feat. Naz」(冨田ラボのアルバム『M-P-C』収録)でご一緒してから、「7-Knife」は壮大な空間にしたいと思い、絶対にこの曲は冨田さんにお願いしたいと思いました。

ーーサウンドのスケールが大きくなったのは、アーティストとして次はもっと大きい場所に行こうという意識があったからですか?

Naz:どんどん外に出ていきたいと思っていたので、その気持ちはあります。

ーーまさに<88rising>やBTSなど、アジアにルーツがある音楽が今どんどんアメリカで活躍していますよね。アメリカで活躍しているミュージシャンで、シンパシーを感じる人はいますか?

Naz:最近はJojiをよく聴いてます。彼はすごく不思議な魅力があるアーティストだと思います。私は音楽に違和感を求めているのですが、Jojiの音楽はスーっと身体に入ってくるサウンドなのに、すごく新しく感じる。聴いていて落ち着かせてくれる感じと、エンドレスに聴いていたくなる不思議な魅力の両方があって、ただカッコいいだけではないミステリアスなところがいいなと思います。

ーー先ほども「変なものを作りたい」と言っていましたが、その違和感を求める動機はNazさんのどんな音楽の理想から来るものでしょう?

Naz:オリジナリティです。ジャンルがパッと浮かぶものや、聴いたことがあるような曲ももちろん好きですが、自分で曲を作るとなると、新しくて自分に正直な作品を作りたいと思っています。というのも、生きている上で自分と誰かを比べてしまうことはあると思いますが、一番になりたいと思った時には、「自分になること」が一番の手だと思うんです。最高の自分を表現できるのも自分だけだと思うので、その人だけの何かが出ているものにすごく惹かれます。

ーーなるほど。他に最近よく聴いていた音楽はありますか?

Naz:日本ではTojiさんとLEXさんを聴いていました。自分でも理由はわからないんですが、アジアのアーティストが歌うヒップホップの声が好きです。音楽と声の組み合わせがカッコいいんですよね。

ーー音像やリリックが変わっても、アンニュイな感触はどの曲からも感じます。言い換えれば、Nazさんにとって歌は心を落ち着かせるものなのかなと思います。

Naz:そうかもしれないです。音楽を聴いていると、今いる現実とちょっと違う場所に行くようなリラックスした気持ちになれるので、それは常に求めています。確かに、意識はしていないですが、自分が落ち着く歌い回しや表情はなんとなく染みついてきたと思います。

ーーオーディション番組『X FACTOR OKINAWA JAPAN』に出場するなど、13歳の頃から音楽をやられてきたNazさんは、音楽を発信していくことでどんなことを得てきたと思いますか。

Naz:生まれた時から音楽が近くにあったんですけど、自分というものを探すことや、自分の中から出てくるものを外に出すという意識はずっとあって。自分の意志が強くなっているのは音楽のおかげなのかなと思います。

ーー最後に、まだ情勢的に先の見えない状況ではありますが、今年から来年にかけて、どんな音楽を作っていきたいと思っていますか。

Naz:どんどん面白いものを作っていきたいです。あと、いつもは気になっていたけど深堀りできていなかった問題についての知識も増やしていけたらと思っています。常に自分の意見を持っているのが一番大切なことだと思いますし、どういう問題に対しても一度自分の目で見極められるようにしたいので。

ーーそうした意識は、ご自身の音楽に反映されていると思いますか?

Naz:曲を書く時、これまでは割と自分の気持ちを歌詞に書いていたんです。自分の心が集中する場所が、自分の感情だったからなんですけど、今は関心が外に向かっているので、社会の問題についての思いは作品に表れていくかなと思っています。

■リリース情報
「7-Knife(切)」 (読み:セブンナイフ)
発売日:2020年7月22日(水)
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