稲垣吾郎は「時」にまつわるものを愛でるーー腕時計やカメラなど、本質的に優れたアイテムに惹かれる理由とは

 稲垣は以前、令和初の新年を迎えたタイミングで雑誌『25ans』のインタビューに、こんなことを語っていた。「自分を持ちながらも、時を読みながら風のように水のように流れに身を任せていきたい」。そして、困難に直面したときにも「いちばんは時間ですよね。時間は本当に解決してくれる。嫌なことも忘れて、人を許すこともできるし。ただ、いいことも忘れて、人に対する感謝の気持ちすら忘れがちだから、そこは気を付けないとね」とも(参照)。

 激動の日々の中でも稲垣が、しなやかに、そして美しく「時」を刻んでいくことができるのは、「時」の神秘を感じさせるアイテムを愛し、自分の生きている「時」と向き合っているからではないだろうか。本質的に優れたものは「時」を超えて、脈々と受け継がれていく。ドイツの工業製品に代表される「機能美」のように。

 稲垣の仕事の中には、形になるものもあれば、流れていく時間そのものが作品になることもある。音楽で繋がるライブの時間、笑い合うバラエティの番組、ビストロで演出する食の時間……。しかし、その場限りで消えていくわけではない何かが残る。きっと、稲垣はそんな気持ちを持って「時」を見つめているのだろう。瞬間的なエンタメにこそ、本質的な「機能美」を。稲垣の丁寧な仕事ぶりに、そんな「時」を作る職人気質な一面を感じずにはいられない。

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