ZOCメンバー徹底分析:西井万理那

ZOC 西井万理那、グループにとって閃光のような存在に 「今の時間」を謳歌しながら歩を進めるアイドル道

 彼女のアイドル人生はZOCの始動で2度目の幕を開けた。高校時代から「生ハムと焼うどん」というユニットで活動し、セルフプロデュースとしての異例の快進撃は何者にも塗り替えられておらず、いまだ記憶に新しい。当初は校内行事の出し物から始まったという「生うどん」は、みるみるうちに規模を拡大し女子高生の手に持て余すほどの成功を収めていった。華々しい躍如にシビアな問題が影を落とし始めたころ、西井から事情を聞いた現・共犯者の大森靖子はなんとか「生うどん」の継続を試みるも、それは蘇生ではなく延命に終わってしまった。かくして「生うどん」は「断食」期間に入った。それでも西井はアイドルを続けたかったという。それが過去の栄光を捨てきれないがゆえの舵取りに見えないのは、現在の彼女が多くを望んでいないからだろう。活動規模がふくれあがるにつれて生じる様々な障害に自らの身体でぶつかってきたからこそ、スピードを出し過ぎることの危険性を肌感覚で理解しているのだ。走り続けていれば車体は軋み、亀裂が走る。そんな時、速度を落としてゆっくりと修繕できるような進み方をすれば、もう断絶はおこらない。決して理論派とはいえない彼女が自らの経験から得た最善の方法。それが「今を続ける」ということなのだ。

 閃光のような彼女は、しかし穏やかに今の時間を謳歌しながら歩を進める。照準は彼女のアイドルとしての覚醒の地、横浜アリーナ。でっかい夢をなんてことないかのように口にしてくれる彼女は、やはり頼もしい。Twitterのプロフィール欄に記された「生ハムと焼うどんがだいすきなにっちやんです」という言葉は、少し切なくてすごく愛おしい。おおきく揺れるツインテールはとても眩しい。オレンジの光は波及してゆく。今度のパーティーは終わらないということに、いや、彼女が終わらせないということに、もうみんな気がついている。

■清家咲乃
1996年生まれ。青山学院卒。BURRN!編集部を経て現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。ヘヴィミュージックを中心に、ルーツロックからヒップホップまで幅広く好む。『エクストリーム・メタル ディスク・ガイド』などに寄稿。

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