MUCCのパフォーマンスから感じた、配信ライブの新たな可能性 メンバー4人の絆も垣間見えた公演に

 本公演のセットリストの主体となったのは、最新アルバム『惡』。MUCC通算15枚目となるこのアルバムは、オリコンデイリーチャートで1位、Billboard JAPAN総合アルバムチャート“HOT ALBUMS”初登場で9位という輝かしい順位を記録し、メンバー自身も「最高傑作」と自負している作品である。私はこの作品を、彼らのリアルな感情や生きざまが強く伝わってくるアルバムだと感じており、だからこそライヴではどんな表情をして演奏するのかが見たかった。その点で言えば、この日は配信用なのか通常よりもライティングが明るく、メンバーの表情もはっきりと見えたため、より楽曲に入り込むことができた。

 ライブのラストは、円陣を組む、手を繋いでカーテンコールを行なうなど、メンバー4人の絆が垣間見える場面もあったが、ミヤ曰く「その場の流れで自然にそうなりました」(引用:Twitter)とのこと。誤解を恐れずに言えば、MUCCは決して「仲の良いバンド」ではない。長きにわたる活動の中では、より良い音楽を求めるがゆえに生じた軋轢に関して、過去インタビューで語ったこともあった。そんな彼らが衝動的にメンバーと手を取り合ったという事実こそが、このライブの成功を物語る何よりの証拠だと思うのだ。

 MUCCは常に進化してきたバンドだ。それは、新曲をリリースする度にテイストが変わる多彩な音楽性や、アウェイな対バンやイベントにも果敢に飛び込んできた歴史をからわかる。常に挑戦的な彼らだからこそ、この危機的状況を逆手に取り、さまざまなアイデアや技術を駆使することで、新たな配信ライブの可能性を広げることができたのだろう。年末に決まった日本武道館でのワンマンライブでは、さらに進化した彼らのパフォーマンスが見られるに違いない。

■南 明歩
ヴィジュアル系を聴いて育った平成生まれのライター。埼玉県出身。

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