乃木坂46×バナナマン、欅坂46×澤部・土田、日向坂46×オードリー……グループ力を際立たせる坂道×芸人の関係性

日向坂が若林の指令のもとで怪物・春日に挑む『日向坂で会いましょう』

 日向坂46は、アイドルの可愛らしさを押し出した「王道路線」を歩んでいる。グループにとってのテーマでもある楽曲「ハッピーオーラ」に〈大事なのは前を向くこと〉という歌詞があるように、「欅坂46の2軍」という見られ方をされていた時期や、日向坂46のルーツ的存在だった長濱ねるが前身グループ・けやき坂46を卒業したときも、ポジティブな姿勢で乗り越えてその後の飛躍に結びつけている。どんな逆境にもぶつかっていける強さが日向坂46にはある。

 そんな日向坂46の『日向坂で会いましょう』のMCはオードリーだ。オードリーといえば、お笑い界のモンスター・春日俊彰を相方・若林正恭が調教師のごとく操ってネタを組み上げていく。ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の2020年4月25日回で、若林が「春日は自分で振らない、偉そうなことを言っているだけでボケない」とその特徴を語ったように、他を寄せ付けない春日の独特のスタンスは、基本的に若林にしか生かせないものである。

 同番組では、そんな若林がキーマンとなっている。司令塔的な役割を担い、日向坂46メンバーの糸を引いて春日に挑ませ、笑いを生んでいく形だ。メンバーは若林のキラーパスを受けながら、持ち前の「逆境を乗り越える力」で春日の牙城を打ち崩そうとする。

 2019年6月23日回から3週にわたってオンエアされた企画「男・春日完全奢り!日向坂46ご褒美BBQバスツアー」は、その陣形を象徴するものだった。メンバー全員参加のBBQ費用を春日が全額負担するという、このツアー。若林は、別のロケバスに乗り込んで春日とメンバーのツアーをモニタリング。春日にバレないように、メンバーへいろんな指示を出していく。

 スーパーでの買い出し時。若林の指令で上村ひなのは春日にカートをぶつける。「意外と強心臓」と言われるように、何度もアタックする上村に、春日としては至極真っ当に「引くな」とツッコミをいれる。さらに3台のカートに囲まれて身動きがとれなくなった春日について、若林は「カートを自分で引き寄せた」と気づき、松田好花にそのことを指摘させる。松田は、若林の指示に従い「自分で引き寄せましたよね」とツッコむばかりか、「嬉しいんですかぁ?」とSっ気のある一言までかぶせて、春日のニヤつきを引き出させる(ちなみに春日は、日向坂46にとっての「公式ド変態」といわれている)。芸人同士の絡みでは見られない春日の顔がそこにはあった。若林の暗躍、メンバーの実行力が生かされた場面だ。

 ちなみに若林は、『オールナイトニッポン』の2017年10月7日回で「自分は芸能界では2軍、3軍」、『たりないふたり』(日本テレビ)の2020年5月28日回でも「MCは生徒会長か暴走族しかいないのではないか。自分は学校で3軍のエースだった。だから(MCをつとめて)偉そうに見えるのが怖い」と語っている。この言葉は、かつて「欅坂46の2軍」と言われていた日向坂46に似ている。若林と日向坂46の相性の良さは、たどってきた背景の近さが要因になっているのかもしれない。となると、「1軍」を自称する春日は、若林やメンバーにとって毎回倒しがいのある良いライバルなのだ。

 若林は『たりないふたり』でさらに「バットを短く持って、1個1個を確実にやってきた」と、大振りせずに続けてきた結果が現在につながっていると話した。『日向坂で会いましょう』で日向坂46は、まだビッグヒット的な企画を飛ばせてはいないものの、各回で着実に見どころを作り上げている。2020年4月26日オンエア「第2.5回企画プレゼン大会」は派手ではないものの良い回だった。宝塚歌劇団が好きな濱岸ひよりが、オードリーのふたりの名前を宝塚風にアレンジ。春日を「春野翼」、若林を「若香響」とネーミングし、その好センスに春日は「(実際に)いそうだね」「うまいな、やっぱり好きなだけあって」と舌を巻いた。番組が進むにつれて、各メンバーのそういった「うまさ」が目立つようになってきた。

 お笑い芸人とアイドルの相乗効果で成り立つ3番組。これからどのような発展を番組が遂げていくのか、期待がふくらむ。

■田辺ユウキ
大阪を拠点に、情報誌&サイト編集者を経て2010年にライターとして独立。映画・映像評論を中心にテレビ、アイドル、書籍、スポーツなど地上から地下まで広く考察。バンタン大阪校の映像論講師も担当。Twitter

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