ドラマ『3年B組金八先生』配信スタート 風間俊介、亀梨和也、加藤シゲアキ……出演ジャニーズの光る名演

パーフェクトなキャラクター像を守りきった加藤シゲアキ

 上戸彩が性同一性障害の転校生・鶴本直を熱演したことで話題となった、第6シリーズ(2001年)。誰もが人と違いを持っており、それを認め合うことの大切さを伝えたシリーズとなっている。直が、素性を明かさずメールで悩みを打ち明けている相手が、クラスメイトのハセケンこと長谷川賢だ。ハセケン役には、加藤成亮(加藤シゲアキ)が抜擢された。

 男前で正義感も強く、誰からも慕われていて、成績も優秀で、弁護士の家庭で育ったエリート。そんなハセケンのハイライトとして外せないのは、何と言っても2話目。クラスで文化祭の出し物を考えているとき、大騒ぎになってまとまりがつかなくなる。ハセケンはそんな周りを見渡して、おもむろに机の中からリコーダーを取り出し、ベートーベンの「運命」を吹いて騒乱を制圧。ハセケンの影響力がいかに強いか分かる一連である。

 まさに完全無欠のヒーロー。その真っ直ぐさは、直の頑なさすら笑顔に変える。こんな役は並大抵の俳優ではできない。その点、加藤は誰が見ても二枚目だと認めるビジュアルの説得力、さらに5歳の頃に絵本を書き、のちに小説家としてもデビューする知的さを持つ。彼にしかできないようなキャラクターだ。

 また加藤は、パーフェクトなハセケン像を一切壊さず役を進めていったキープ力が素晴らしい。決して派手な役ではないが、完璧に思える人間であっても弱い一面は必ずあるという、第6シリーズのテーマに沿った重要なポジションを担っている。卒業回、金八先生から「男前が台なしだ」といわれるほど大号泣する姿も、これまた魅力的だ。

武田鉄矢を食った、八乙女光

 第7シリーズ(2004年)は、かなりヘビーな内容で知られている。同シリーズでは何かに依存することをテーマにしており、とりわけ麻薬蔓延、ドラッグ中毒に関する描写は衝撃的だ。

 中心となる生徒は、丸山しゅう。父親がドラッグに溺れた挙句に事故を起こして寝たきり状態。そして母親からは激しいDVを受けている。しゅうはかつての幸せな家庭が忘れられず、どんな暴力を振るわれても母親を愛し、もはや意思疎通がかなわない父親を懸命に守ろうとする。彼の健気さが切なすぎて苦しい。

 第11話で父親を乗せた救急車を追うシーンでの、しゅうの悲痛な叫びは、彼の感情の糸が切れゆく瞬間でもある。家族が崩壊して孤独となり、さらに唯一分かり合えていた親友との仲違いや進学問題が重なる。心優しく、素朴な少年の精神が堕ちていき、心の弱さに負けてドラッグに手を出す。

 演じた八乙女光はとにかく役への没頭がすさまじかった。八乙女は、元ドラッグ中毒患者を取材するなどリアルさを追求。涙ながらに腕に注射を差し込むショッキングな場面を境に、顔つきが明らかに変化する。金八先生が家にやって来たせいでドラッグを打てなかったとき「チッ」と舌打ちする姿も、何気ない仕草だが、リアルな苛立ちがうかがえて演技として見過ごせない。

 リアルといえば、母親から暴力を受けるシーン。母親が手を振り上げた瞬間に、下を向いてビクッと肩をすぼめ、条件反射的に殴られる体勢を作るところは実に見事。

 極め付けは19話。教室内でドラッグの中毒症状があらわれ、床にこぼれた水をすするところ。同級生役の濱田岳が力づくでドラッグについて問い詰めても、「水が飲みたい」と床に目線をさまよわせる。禁断症状からくる異様な執着心を体現している。金八先生は「しゅうはいいやつだった。そんなやつがこうなっちゃうんだ。ドラッグを憎め!」と魂を込めて訴えるが、武田の力演を引き出したのは、間違いなく八乙女の壮絶な芝居だ。武田を食ったワンシーンである。

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