『OVERCOME THE VIRUS』インタビュー
lynch. 葉月、エンターテイナーとして見据える“今” ライブハウス支援企画立ち上げの経緯も明かす
ライブハウスを主体に活動してきたlynch.が、自らの楽曲を活用した支援企画に取り組んでいる。『OVERCOME THE VIRUS』=ウイルスを克服する、というストレートなタイトルのシングルをlynch.公式HPにて4月28日より通信販売、5月13日より順次配信スタートし、その売り上げを全国のライブハウスに分配するというものだ。葉月(Vo)がSNSでレコーディングの様子を随時報告するなど、普段とは異なる方法で進められた今作。企画立ち上げの背景から、lynch.としては珍しくメッセージ性を込めたという収録曲、そしてライブ活動が制限される今、リスナーに伝えたいことまで、葉月にじっくりと聞いた。(編集部)
エンタメ自体がないことに慣れてしまうんじゃないか、というのが一番怖い
――今回の企画は「身近なところにあるライブハウスに対して、何かできないか」と考えてスタートしたとのことですが、ライブハウスに対してどのような思いを持っていたのでしょうか。
葉月:ずーっと音楽人生を過ごしてきた場所なので、熱い思いももちろんありますけど、それ以前に、ただシンプルに僕らの“職場”でもあるので。コロナが収束して活動できるようになりました、という時に、この状況だとライブハウスがもう無い可能性もあるわけじゃないですか。ライブをやるところがなければ、僕らは当然ライブができないわけで、それはもちろん困りますから。これは何かできることをやっていかないとな、と。とにかく守らないとやばいぞ、という感じです。
――それはスタッフの方と話している中で出てきたということですか?
葉月:そうです。最初は時間があったので「曲でも作ろうか」と。そこから順々に、「寄付しませんか?」「ライブハウスがいいんじゃないですか?」と話が進んでいきました。
――その話し合いの場にはメンバーの皆さんもいらっしゃったんですか?
葉月:メンバーはそこにはいなかったです。でもその場ですぐ、メンバー全員のグループLINEに投げたら、みんなからすぐ「やろう、やろう」って返ってきて。
――lynch.はライブバンドという側面もあるかと思うのですが、ツアーも中止になってしまい、大変な状況かと思います。そんな中、葉月さんはSNSなどではあまり暗いことを呟かないようにしようとしている様子が伝わってきていて。日々どのようなことを考えて過ごしていますか?
葉月:基本的に僕、何においても後ろ向きに考えることをしないんで。だから、まずい状況になったのであれば、それをどうしようかな、ということしか考えない人間なんです。だから、あえて明るく振舞おうとか、そういうことも別に考えていないですね。
――TwitterやInstagramの様子は自然体ということなんですね。
葉月:そうですね。結局どうにかするしかないから。塞ぎ込んでも時間の無駄かなって思っちゃうタイプなので。「ライブが一生できない」というのも100%ないとは言い切れない、とも思ってるんですよ。「じゃあそうなったらどうしようかな」ということも考えながら過ごしていますね。それは答えもまだ出ていませんけど。
――たしかに日々状況が変わっていっていますし、どうなるか分からないですよね。
葉月:もちろん解決するのが一番いいですけど、解決しないかもしれないですし。今は収束を待ってる状況ですけど、そこでただ曲を作りためておくのも、僕としては物足りない。どんどんファンの人の心の中から僕らの存在が薄れていってしまうんじゃないか、エンタメ自体がないことに慣れてしまうんじゃないか、というのが一番怖くて。復活したときに、待っている人が誰もいない状況になっていたら困るし、僕らのことを好きだと言ってくれていて、生きがいにしてくれている人たちのために何かできることないかな、とずっと考えていて。で、最近全然関係ないですけど、ゲーム配信してるんですよ(笑)。
――イラストも描いていますよね。
葉月:あれは暇だったのもあるんですけど(笑)。ゲーム配信は、文字では伝えきれない部分もファンに語り掛けられるし、ただひたすらライブ配信で喋り続けるよりは、見ていて飽きないかなと。ゲームの力も借りつつ、コミュニケーションを取れたらいいなと思ってやってます。実況者に転職する、とかではないんですけど(笑)。そうやって日々試行錯誤しながらやってますね。
――SNSで言うと、レコーディングの模様を実況するというのが新鮮だなと思いました。実際、ファンからの反応はどうでしたか?
葉月:やっぱり良かったですよ。企画自体が時代にハマったと言ってしまえばそうなんですが、発表したときのリツイート数もすごかったです。みんな何とかしたい、と思っているのかな、というのがすごく伝わってきました。音源が完成してから、いつもみたいに、発売日決定です、これが出ます、とプロモーションしても良かったんですけど、なるべく早く「こういうことするよ」と言いたかったんです。ファンのテンションが下がっていくのを防ぎたかったんで。なので、まだ曲を作っていない状態から企画自体を発表して、随時報告していく形になったんですけど、結果として、熱を保ち続けられた感じはありますね。
――むしろ完成に向けて、どんどん盛り上がっていく様子も伺えました。実際実況しながらやってみて、いつもと違った部分はありましたか?
葉月:実況する部分についてはそんなにないですけど、ここまで色々急ぎながら作ったのは初めてでしたね。スタジオも、東京まで行ってみんなで集まって録ろう、とはなれなかったので、名古屋でスタジオを探したり、とにかく一番早いスケジュール感で動けるように色々調整したり。そういうのは今までと違う部分でしたよね。
――確かにかなりのスピード感で完成まで進んでいましたよね。
葉月:曲作りは頑張ればできますけど、他の皆さんが関わってくる部分、例えばレコーディングや工場のプレスなんかは、なかなか僕たちの意思だけじゃ決められないので、そこがちょっともどかしい部分もありました。でも、早くしないとライブハウスがどんどんピンチになってしまうので。