ヒゲダン、ミセス、マカロニえんぴつ……親しみやすさの背後に光るスパイスが効いた音作り 各バンド最新作を分析

 サウンド面で言えばヒゲダンはR&Bやヒップホップ、ミセスはEDMを参照して、バンドサウンドに広がりを与えている。一方で、4月1日に『hope』をリリースしたマカロニえんぴつは、ギター、ベース、キーボード、ドラムのオーソドックスなバンドアンサンブルからブレない。バンドサウンドの軸がたしかだからこそ、細やかなアレンジが雄弁に響いている。「この度の恥は掻き捨て」でフィーチャーされるチープなリズムボックスのように、なんならアナクロニックな味わいさえある。そこで安直なノスタルジーに引きずられないのは端的に楽曲の強さということだろう。

 同作についてはすでにレビューを書いている(マカロニえんぴつ『hope』がチャート健闘 ユーモアとオマージュ溢れるポップセンス光る1枚に)ので詳しくはそちらに譲るが、そこでも強調したように、過去のディスコグラフィをさかのぼっても『hope』は出色の一枚だと思う。全体を貫くコンセプトに凝るよりも、まず各々個性に満ちた楽曲がぎゅっと寄り集まることでうまれる幸福感を味わうことができる。アルバムとしての強度を担保するのは必ずしも物語や背景となる設定ではないのだ。

マカロニえんぴつ『hope』

 以上、本記事では4月リリースの新譜ということでアトランダム的にピックアップした3組を紹介してきた。どのバンドも、親しみやすさの背後に光るスパイスのような捻りが印象的だ。その捻りを裏打ちする細やかなサウンドの作り込みに、いま一度耳を傾けてみたい。

■imdkm
1989年生まれ。山形県出身。ライター、批評家。ダンスミュージックを愛好し制作もする立場から、現代のポップミュージックについて考察する。著書に『リズムから考えるJ-POP史』(blueprint、2019年)。ウェブサイト:imdkm.com

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