連載「Signal to Real Noise」第七回:TAWINGS
海外公演も成功、気鋭の3ピースバンド TAWINGSインタビュー 「常に作りたいものを作ること自体が目標」
Spotifyが注目する、ニューカマー発掘プレイリスト『Early Noise Japan』と、リアルサウンドのコラボによる連載企画「Signal to Real Noise」。プレイリストでピックアップされた“才能の原石”たちへ、手練の音楽評論家がその音楽遍歴や制作手法などについて取材する。
同企画の第七回は、小野島大氏によるTAWINGSへのインタビューをお届けする。(編集部)
バックナンバー
第一回:福岡から世界へ、Attractionsが考える“アジアで通用するということ”
第二回:Newspeakが語る“リバプールと日本の違い”
第三回:CIRRRCLEに聞く、国やバックグラウンドを超えた音楽作り
第四回:Mega Shinnosukeに聞く、“何でも聴ける時代”のセンスとスタイルの磨き方
第五回:世界を見たShurkn Papに聞く、地元から発信し続ける理由
第六回:竹内アンナに聞く“独特のハイブリッド感”の原点
TAWINGS(トーイングス)は、東京を拠点とする女性3人組だ。メンバーはCony Plankton(Vo,Gt)、eliy(Ba)、Yurika(Dr)。
2016年結成、2017年5月に7インチシングル『Listerine/Dad Cry』でデビュー、The Lemon Twigs、Hindsなど外タレのサポートも数多くつとめ、2018年の『SXSW』にも出演、初の海外公演もおこなっている。昨年12月には1stアルバム『TAWINGS』をリリース、さきごろチボ・マットの羽鳥ミホをゲストに迎え、レコ発ライブを成功させたばかりだ。
その、ガレージ〜サイケデリック、ポストパンク、ニューウェイヴ、クラウトロック、ダブなどをミクスチャーしたサウンドに、ぼくは初期のBuffalo Daughterを真っ先に思い起こした。アメリカの中西部あたりの出身と言われてもおかしくない、いなたい空気感と、ダブのメタリックな感触が同居した個性は、日本離れしている。まだ20代。初々しいチャーミングさも魅力だが、これからライブを積み重ねて経験を積めば、もっともっと良くなるに違いないと思わせる伸びしろの多さも強みだ。ちなみに、作詞・作曲を手がけ英語で歌うCony Planktonは正真正銘の日本人女性だが、芸名はジャーマン・ロックの大物プロデューサー、故コニー・プランクからとったというのも興味深い。
この取材は去る2月19日におこなわれている。それから2ヶ月たって、まさに世界は激変した。ライヴという音楽文化そのものが大きな危機にさらされている今、彼女たちがそれをどう乗り越え飛躍していくか。今後も期待を込めて注目していきたい。(小野島大)
「自分もいつかは音楽をやるんだろうなぁと思っていた」(Cony)
ーー結成のきっかけを教えてください。
Cony Plankton(以下、Cony):今は脱退してしまったKanaeちゃんっていう子がいたんですけど、その子と一緒に高円寺のU.F.O. CLUBに遊びに行って。そこで急に思い付き的に「ガールズバンドをやろう」という話になったことがきっかけです。もちろん、それまでもなんとなく音楽をやりたいなとは思っていたんですけど、Kanaeちゃんとパッと思い立って「一緒にやろう!」となりました。
ーーU.F.O. CLUBということは、サイケっぽいバンドのイベントか何かで?
Cony:はい。サイケ、ガレージのイベントでした。そこに出ていたザ・シャロウズっていうバンドがすごい好きで。シャロウズとか蛸地蔵とか、その辺がすごく好きでした。
ーーそのあたりのバンドは、どうして知ったんですか?
Cony:高校のときに毎日一緒に学校に行っていた親友と結構音楽の趣味が近くて、そのときは洋楽ばかり聴いていました。でもある日、「シャロウズっていうバンドがいるんだけど」と話題になって、聴いてみたらめちゃめちゃカッコいいなと思って。それまではライブハウスに行ったことがなかったんですけど、それがきっかけで行くようになりました。自分にとっては新しい世界だったんですけど、間近でバンドっていうものを観て、ドキドキして「いいな、やりたいな」と。
ーー「現場って楽しい」ってことですね。レコードで聴いてるのと全然違う体験が待ってる。
Cony:そうなんですよね。でも自分にとっては緊張する場でもありました。
ーーヘンな人がいっぱいいたんじゃないですか(笑)。
Cony:本当に知り合いがいない状態で急に入っていったので、どうしていいかわからない。行って話す人もいないしどうしよう、みたいな感じもあったんですけど、だんだん友達が増えてきました。
ーーそこから音楽をやりたいという気持ちが芽生えていった?
Cony:そうですね。でも、もともと小さい頃から両親が音楽をやっていたのと、自分もずっとピアノをやっていたんです。その中で、バンドの音楽も色々聴かされていたので、「自分もいつかは音楽をやるんだろうなぁ、でもどうやって始めるのだろう」と思っていました。
ーーご家庭ではどういう音楽が流れてたんですか。
Cony:Queenとか、あとプログレとかです。あとは親がジャズ畑の人なので、ジャズとか。自分がやっていたこともあって、クラシックも流れていました。早いうちに(音楽を)やっておかないとっていう焦燥感みたいなものもあって。同年代か少し上ぐらいの歳のバンドが多かったので「早くやらないとダメなのかも」なんて思っていました。TAWINGSを結成して、実際にライブをやり始めたのは1年後ぐらいなのですけど、それまではスタジオに入ってみたり、ひたすら妄想してバンド名を考えたりする楽しい時間もありました。
ーーじゃあバンドの出発点としては「楽しそうだからやってみよう」というぐらいの軽い感じだった。
Cony:そうです。でも周りのバンドを色々見るようになって「もっといい音楽できるかも」と思って「じゃあ、やっちゃおう!」みたいな感じでしたね。
ーー周りで意識していたバンドというと?
Cony:2016年ぐらいに活動をやめちゃったのですが、Burghっていうバンドがいて。活動していた界隈が近かったというのもあって、本当に毎回のようにライブに行っていました。曲を作るとBurghみたいになっちゃう、みたいな時期がありました。
ーー今のTAWINGSの音楽とBurghの音楽性ってちょっと違いますよね。
Cony:今は違うのですが、初期の7インチの頃は、もうポストパンクゴリゴリで、かなりBurghの影響も強く出たかなと思います。(テンポが)早ければ早いほどいいような感じの。
ーーああ、最初はそんな感じだった。
Cony:はい。音が少なければ少ないほどいい、みたいな。それから色々やりたくなって今に至るという感じです。
ーーじゃあKanaeさんと始めて、eliyさんとYurikaさんが後から加わったという形なんですね。
eliy:そうですね。私はその後わりとすぐに入って、皆でスタジオに入ったりしていました。当時のドラムは男の子だったんですけど、ガールズバンドがやりたいって話をしていたので、女性ドラマーを探していたところにYurikaちゃんを紹介してもらいました。