音楽クリエイター集団「†Fanatic」とは何者か? 特異な成り立ちと、切なくも狂気的な楽曲が示す個性
最近インターネット発のミュージシャンが増えているが、米津玄師やEveのようなシンガーソングライターだけでなく、ずっと真夜中でいいのに。やヨルシカのような音楽ユニットも人気を集めている。ネット発のミュージシャンはボカロPで知名度をあげた作詞家・作曲家が関わっていることが多いし、†Fanaticもネット発の音楽ユニットではあるが、それらとは少し系統が違う。元々別々のクリエイターとして活動していた黒野京と黒野めるは元々兄弟であり、2人で活動を始めた後に、『マーダグラム』や†Fanaticとしての制作に繋がっているという経緯はもちろん、イラストレーターがきっかけとなってグループが結成され、楽曲が作られているという大きな違いがある。また、ボーカルが2人いることや、英語のフレーズを多用したり、メタルやラウドロックからの影響を感じさせる曲を書くことも珍しい。それこそが、†Fanaticに他のネット発のアーティストとは違う個性や魅力を感じる所以だ。
楽曲の設定にも個性を感じる。アルバムのリードトラックでありタイトル曲でもある「聖少女症候群」はクリスマスソングだ。MVは黒野京の公式YouTubeチャンネルにクリスマス・イブに投稿された。ラブソングや日常の幸せについて歌った楽曲がクリスマスソングには多い。しかし「聖少女症候群」はそのような曲とは方向性が違う。〈ねぇ、お願い神様。もう痛みもわからないの/ずっと祈ってた/罪滅ぼしだって構わないから/今救けてよ マリア〉という歌詞から狂気を感じさせつつ、繊細な歌声からは哀愁や切なさも滲み出ていて、このようなクリスマスソングは今までになかったはずだ。その視点の面白さも個性に繋がっていると思う。
ネット発のミュージシャンには職人的な作品作りをするパターンが多く、あえてメディアに顔出しをしなかったりとパーソナルな部分を出さないことも多い。†Fanaticもロックバンドやシンガーソングライターのようにパーソナルな部分や自らの感情の吐露を楽曲内で全面に出してるわけではない。歌詞に一人称や二人称が少ないこともそれを表しているとも言える。しかし上述したように、クリエイター集団だからこその他にはない個性を†Fanaticは持っているのだ。それこそがこのミニアルバムに詰まっている無二の魅力だと言えよう。
■むらたかもめ
オトニッチというファン目線で音楽を深読みし考察する音楽雑記ブログの運営者。出身はピエール瀧と同じ静岡県。移住地はピエール中野と同じ埼玉県。ロックとポップスとアイドルをメインに文章を書く人。
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■リリース情報
†Fanatic 1st Mini Album『聖少女症候群』
3月11日(水)発売
1. 聖少女症候群
2. 黙示的殉教
3. I'll be right here
4. Answer
5. Secret Liar feat.ゆきむら。
6. このさよならに、愛をこめて。