FLOWの楽曲がアニメに愛され続ける理由 作品に寄り添う力と柔軟性、一貫した姿勢が息の長いコラボに

FLOWの楽曲がアニメに愛され続ける理由

 2月24日に幕張メッセイベントホールでワンマンライブ『FLOW 超会議 2020 〜アニメ縛りリターンズ〜』を開催したFLOW。タイトルどおり、アニメ(と一部ゲーム)のタイアップソングのみで構成されたライブで演奏されたのは24曲の楽曲たちだった(詳細はレポートを参照)。

 その並びを見れば圧巻、というほかはない。当然全曲クライマックス、会場はとんでもない熱気だったという。

 いわゆる「アニソン専門」ではない叩き上げのロックバンドがアニメやゲームのテーマソングを担当するというケースは今や珍しくないが、その先駆けの1組は他ならぬFLOWだったのではないかと思っている。彼らが初めてアニメとのタイアップを行ったのは、『NARUTO -ナルト-』のオープニングテーマとして発表された2004年の「GO!!!」でのことだ。「アニソンはアニソン」「ロックはロック」「バンドはバンド」、まだ根強かった壁を痛快にぶっ壊し、しかもそのすべてをちゃんと自分たちの物語の真ん中に据えながら、彼らはFLOWにしか作れないバンドストーリーを築き上げてきた。だからこそ、アニメ縛りでライブを組んでも、これだけFLOWらしくて個性的なものになるのだ。

FLOW 『GO!!! ~15th Anniversary ver.~』(Music Video Full Ver. コメント入り)

 「GO!!!」以降、その『NARUTO』シリーズや『交響詩篇エウレカセブン』、『コードギアス 反逆のルルーシュ』など話題作と次々とタッグを組み、彼らはアニメを愛し、アニメに愛されるロックバンドとして活躍してきた。日本のアニメが海外で人気を博すのと同時に彼らの楽曲も海の向こうに伝播。『Japan Expo』をはじめ世界中のアニメイベントでライブを行い熱狂を巻き起こす存在となった。2013年に日本を代表する作品『ドラゴンボール』の映画『ドラゴンボールZ 神と神』の主題歌に抜擢され「CHA-LA HEAD-CHA-LA」をカバーしたという事実は、その象徴性の高さを物語るエピソードだ。

FLOW 『CHA-LA HEAD-CHA-LA(ドラゴンボールZ 神と神EDIT)』

 ではなぜ、彼らはアニメに愛されるのか。もちろん、メンバーのGOT’S(Ba)がガチのアニメファンだとか、KOHSHI(Vo)が小さい頃漫画家になることを夢見ていたとか、そういう素地がそもそもあったことは間違いないが、何よりも彼らの音楽がもつ“向き合う力”と“寄り添う力”、そしてそこから生まれる柔軟性ゆえだろうという気がする。

 彼らのブレイク曲が「贈る言葉」のパンクカバーだったことからもわかるように、あるいはSIAM SHADE「1/3の純情な感情」からビーチ・ボーイズ「Surfin’ USA」まで多彩なカバーレパートリーが物語るように、彼らはいわゆる“名曲”をカバーするのが抜群にうまい。うまいというか、そこに対して何の躊躇もないというほうが正確か。たとえば「贈る言葉」はテンポやアレンジこそパンク化しているが、カバーとしてはきわめてオーソドックスかつストレートに歌を届けるものになっている。それは映画のスペクタクルを表現するようにハイパーに進化しながらも王道を邁進する「CHA-LA HEAD-CHA-LA」でも同様だ。誰もが知っている名曲をまっすぐに受け止め、まっすぐに自分たちらしく打ち返す。その姿勢はFLOWというバンドの大きな武器だ。もとよりミクスチャーバンドとして雑多な音楽を取り入れてきた5人だからこそ、硬直した“自分たちらしさ”に頼らずとも自分たちを表現できるし、それを間口広くプレゼンテーションできるということなのかもしれない。

「贈る言葉」
「1/3の純情な感情」

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