アイナ、チッチ、アユニ・D、ハシヤスメ……BiSH、メンバー6人のソロ活動から見える個性

 アユニ・DはPEDROというバンドを結成して、ソロ活動を行っている。PEDROの圧倒的な目玉はサポートギターにNUMBERGIRL、toddleの田渕ひさ子を招聘しているところだろう。田渕がギターを担当していることからも分かる通り、PEDROの音楽性のベースにあるのは90年代のオルタナティブロックやガレージロックである。ソリッドなギターが空間を塗りつぶすような荒々しい音楽を志向しているように感じる。アユニのソロ活動は(他のメンバーと比べて)もっともジャンルを意識しているように思うし、一番わかりやすく、自身の趣味性や指向性の追求しているように感じる。

PEDRO / 感傷謳歌 [OFFICIAL VIDEO]

 ハシヤスメ・アツコのソロ楽曲はアユニの作品と対比的である。ハシヤスメ・アツコがリリースした「ア・ラ・モード」はBiSHのコアな部分であるロックやパンクから距離を置いたような楽曲となっている。ジャケットもピンクが主体で華やかだし、サウンドも打ち込みが主体の「踊れる」ナンバー。ロックよりもダンスに近い趣きであり、コミカルなキャラクターが生かされたような楽曲だ。

ハシヤスメ・アツコ (BiSH) / ア・ラ・モード [OFFiCiAL ViDEO]

 モモコグミカンパニーとリンリンはソロ活動での音源リリースこそ行っていないが、モモコグミカンパニーは書籍『目を合わせるということ』を発売して、多彩な才能を発揮している。リンリンはメンバー初となる公式Instagramを開設して、モデル的なアーティスト性を開花させている。存在感のあるファッションセンスを示すことで、BiSHでのパフォーマンスとは違う個性を提示していることがわかる。

 このように、6人それぞれがベクトルの違う個性を発揮していることがわかる。ざっくり言えば、アイナは擬態しながら個性を発揮させているという意味で“女優”的に、チッチは常に新しいものを取り入れて「今」を更新していくパイオニア的に、アユニは自分のこだわりを追求するロックシンガー的に、ハシヤスメ・アツコはグループの外側にあるものを使って表現する“アーティスト”的に、モモコグミカンパニーとリンリンはそもそもBiSHのジャンルと違う分野で自分を表現する“作家・芸術家”的にそれぞれ活動をしている。各々のソロ活動はどこか重なるものがあるようで、まったく違う個性を発揮しているのだ。ただし、こういうスタンスこそが、BiSHのコアなものをより研ぎ澄ます結果に繋がっているように感じるのである。

■ロッキン・ライフの中の人
大阪生まれ大阪育ち。ペンネームにあるのは自身が運営するブログ名から。人情派音楽アカウントと標榜しながら、音楽メディアやTwitterなどで音楽テキストを載せてます。

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