桑田佳祐、「お家(うち)でRADIO」で届けた日常の愛おしさと希望の歌  “テレワーク風”スペシャルラジオライブで見せたドラマ

 桑田佳祐が出演する民放ラジオ101局 特別番組『WE LOVE RADIO, WE LOVE MUSIC 桑田佳祐のお家(うち)でRADIO~こんな時こそラジオでSMILE!~ supported by SUUMO』が3月20日から22日にかけて、民放ラジオ各局で順次オンエアされた。

 新型コロナウイルスにより外出を控えることを余儀なくされ、各種イベント/ライブも中止や延期が相次ぐなか、国民的アーティスト・桑田佳祐が“テレワーク風”に届けたこの特別番組。局の垣根を超え、桑田が全国に生歌を響かせるーーという、音楽ファンにとっては“贅沢”というほかない内容だが、当の本人は冒頭から「本当にもう、花粉もひどいし、新型コロナも厄介だし、嫌な渡世だなあ。こんな日はやっぱり、おうちで過ごすのが一番か。趣味の歌でも歌っちゃおっか」と、本当に自宅にいるかのようなリラックスムードだ(実際は桑田にとって“第二の家”とも言えるビクタースタジオでの収録)。そこに、「あなた~、お茶ですよ~」と原由子。思わず頬が緩んでしまう。

 「一曲やろうか、原さん」と、盟友・斎藤誠(Gt)を迎えて披露されたのは、『MUSICMAN』(2011年)に収録された「それ行けベイビー!!」。〈適当に手を抜いて行こうな〉〈悩み多き時こそ笑いな〉と、気張らず、大事なものをしっかり抱きながら前に進もうという、まさにいま必要なメッセージが詰まった一曲だ。さらにチャイムが鳴り、片山敦夫(Key)が来訪。そのまま4人で「恋のバカンス」(ザ・ピーナッツ/1963年)を披露するが、エキゾチックなキーボードのフレーズが際立つ。“一人ひとり、音楽仲間が集まっていく”という構成が、それぞれ日本を代表するミュージシャンの魅力を引き立たせていた。

 さらに、こちらもファンにはおなじみの山本拓夫(Sax)&金原千恵子(Str)を加えて、『孤独の太陽』(1994年)収録の「鏡」、『ヨシ子さん』(2016年)収録の「大河の一滴」、『ダーリン』(2007年)収録の「THE COMMON BLUES ~月並みなブルース~」と、桑田のソロ作品を中心に名演が続く。そんななか届いた郵便=リスナーからのお便りには、「桑田さん、待っていましたこんな企画! 新型コロナウイルスの発生以降、日本全国、SMILE不足の赤信号です。桑田さんの歌声でウイルスなんて吹き飛ばしてください!」と記されていた。

 そんなメッセージに応えるように届けられたのが、桑田のソロデビュー曲で、いまも絶大な人気を誇る「悲しい気持ち (JUST A MAN IN LOVE)」(1987年)だ。切なくやりきれない歌詞だが、同時に弾むような明るさも湛えたこの曲は、いまの状況で聴くとあらためて胸に沁みるものがある。

 桑田は、番組のサポートに訪れていたライブスタッフをも気遣いながら、「もう少し辛抱していただいて、みんなで協力しあって、いまの状況を乗り越えましょう」と訴える。そして、「お客さんの前で披露する日が近いといいなと思います」と語り、唯一音源でオンエアされたのが、1月24日、地上波民放5系列114局の同時生放送という歴史的な番組『一緒にやろう2020大発表スペシャル』で初披露された、“2020年の主題歌”とも言えるアンセム「SMILE~晴れ渡る空のように~」だった。人々の心を穏やかに鼓舞し、晴れやかな気持ちを広げるこの曲に、つかの間、日々の憂いや不安を忘れたリスナーも多かったことだろう。また笑顔でファンのみんなに会える日まで、新曲の生演奏はとっておくという、希望溢れる再会への約束ともいえる一幕だった。

桑田佳祐「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」民放公式スペシャルムービー (民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング)

 ハイライトだらけの番組は、まだ終わらない。続けて演奏されたのが、誰もが知るサザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」(1979年)。「悲しい気持ち」もそうだが、桑田の楽曲は聴く状況や演奏により、さまざまな表情を見せてくれるのが、何千回、何万回聴いても、決して聴き飽きない所以だろう。全国民が合唱できる切ないラブソングが、この日は人々の傷を優しくかばうものになっていたように思う。そして、番組の最後を飾ったのは、2011年、桑田が東日本大震災の復興応援ソングとして制作した「明日へのマーチ」。日常の愛おしさと、未来への希望を高らかに歌う、エンディングにふさわしい一曲だ。

 およそ1時間、小編成の“テレワーク風”ライブで、これだけのドラマを作り、世代を超えたリスナーにメッセージを伝えられるアーティストはやはり、桑田佳祐をおいてほかにいないだろう。TOKYO FMでレギュラー放送されている『桑田佳祐のやさしい夜遊び』でも感じることだが、トークも、歌唱も含めて、桑田の“声”には人の感情を揺らし、そして最終的に笑顔にする力がある。聴き逃した人は、ぜひラジオ視聴サービス「radiko」のタイムフリー機能で楽しんでもらいたい。

『WE LOVE RADIO, WE LOVE MUSIC 桑田佳祐のお家でRADIO~こんな時こそラジオで SMILE!~ supported by SUUMO』
(※3月28日(土)AM 4:59まで)。

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