『Re:I』インタビュー
安田レイが明かす、新アルバム『Re:I』で手にした自信 「不器用な自分でも良いんだ」
音楽は何もルールがない、もっと自由になっていい
ーー作詞作曲とも自身で全て手がけた「赤信号」は、ストレートなR&Bスタイルの曲で、大きなチャレンジだったと思うのですが。作曲は鍵盤を弾きながらですか。
安田:はい。洋楽ではもうずっと、同じコードやビートのループで聴かせるつくりの曲が多くて、私もそういうスタイルが好きなので、今回トライしたんです。これまでは、みんなが思う安田レイ像を壊しちゃいけないと、今までと違うことをやろうって、胸を張ってできていなかったんですけど。今回は、そうじゃない私も存在してるんだよ、みんな見て! っていう気持ちを隠さずにぶつけていきたいと思ったんです。「赤信号」はそんな思いでつくった曲なんですけど、まだドキドキしてますね。みんなはこの曲、どう思うかなって。
私の曲の主人公は、いつもだったら何か悩んでいても、自分で解決しなきゃって前向きで、強いんです。「赤信号」では、寂しさもあってわがままに男友達を呼び出してドライブに行くんですけど、不意にキスをしてしまう。友達なんだから絶対にしてはいけないことをしてしまうというのを、“赤信号で止まれなかった”こととかけて表していて。自分をうまくコントロールできなくて、想像もしていない行動を取ったことに後悔もあるんですけど、自分を苦しめていたルールから解放されて自由になっている姿は、今の自分と重なり合うんです。人生は思い通りにいかないというか、思っていなかったことが、どんどん起きていくよねって、そんな思いも伝えたいなと。
ーー安田さんは、ライブではアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」などをカバーしているので、この「赤信号」を聴いた時、ついにR&Bで来た! って思ったんです。
安田:もともと18歳の頃から「こういった曲を歌いたい」という思いはありました。R&Bはずっと大好きで、アリシア・キーズやアッシャーを小学3年生の頃から聴いていて。小学校はインターナショナルスクールに通っていたので、周りもみんな大人と変わらないものを聴いていたんです。そういった環境で、良い音楽をたくさん聴いてこれたことにはすごく感謝してますね。小さな頃から歌うこともすごく好きだったんですけど、 即興でメロディを考えて、曲をつくるのも好きでした。それが今、作曲に生かされているところもあります。
小さい頃からおしゃべりが下手で、思いを言葉にするのに、いまだにすごく苦しむんですけど。言葉でうまく伝えられないから、どんどん思いが溜まっていって、苦しんでたんです。そんな時にメロディにしてみようかなって考えたり、歌詞にすることで、そのモヤモヤを吐き出せるようになったんですね。だから今は、こういう性格で良かったなって。器用で、なんでも言葉にできたら、ここまで歌を好きにはなっていなかったかもしれないし、不器用な自分で良かったのかなと思います。
ーー「赤信号」の文字数の少ない抽象的な歌詞は、洋楽や、日本だと70〜80年代の曲を思わせるものです。特に影響を受けたソングライターはいますか。
安田:BONNIE PINKさんですね。彼女は自分を“ストーリーテラー”って呼ぶんです。彼女が結婚を発表したライブを観ることができたんですけど、「これからも、失恋も、片思いの曲もなんでも書くわよ。私はストーリーテラーだから」という言葉が、もう一生忘れられないもので。私の場合、曲のベースは本当にあったことから生まれるんですけど、音楽って何もルールがないものですよね。音楽だったらなんでも許されるというか、もっと自由になっていいんだなと思いました。
ーー洋楽で、特に歌詞が好きな曲はありますか。
安田: アリシア・キーズの「If I Ain't Got You」はもう、死ぬまで大好きだと思います。キーシャ・コールの「Love」も好きですね。何回カバーしてみても、喉の使い方がマネできなくて、彼女にしか歌いこなせない曲だなって思うんですけど。
ーー人を思う、切ない感情を表した歌詞に惹かれることが多そうですね。それは「赤信号」の歌詞も通じるものだと思いますが、どういった時に歌詞を書きたいと思いますか。
安田:常に頭の片隅で考えてはいますけど……やっぱり気持ちが沈んでいる時の方が、言葉は出てくる気がします。ずっと幸せだったら、曲は書けないかも。思いついた言葉はいつも録音したり、メモしておくんですけど、見返すと、それを書いた時のテンションがすごくわかるんです。調子がいい時は、軽やかな言葉になってますね。でも、調子が悪い時の言葉の方が、自分を深く見つめられているかな。
ーーソロデビュー直後に、英語詞の方が、日本語詞よりも気持ちを込められるという発言をされていたのですが、今はどうですか。
安田:今も同じです。日本語って本当に歌うのが難しいので。ひと言ひと言の存在感が強くて、どこか言葉がカクカクしてしまって。対して英語は、全体をひとつの流れで、気持ちを切らすことなく歌えるんです。ずっと英語の歌を歌っていたこともあって、日本語で歌うときは発音なども気をつけながらになるんです。でも、それだと感情が乗らないし。反対に、感情が乗れば乗るほど、私にとってナチュラルな歌い方をすると、日本語が伝わりづらくなる。常に葛藤がありますね。
ーー英語詞により馴染んできた方には、日本語詞で歌うのってそれほど大変なことなんですね。特にラップが日本で一般化してからは、歌詞における言葉の量がものすごく増えていて、大変そうに見えます。それでも安田さんは、「Sunny」など言葉数の多い、字余りな歌詞をフロウでうまく収めるのがうまいと思いますが、どういったテクニックを使っていますか。
安田:それについては、常に研究しています。とにかく自分の歌を何回も聴き返して、ここの発音を直したいなとか、そういう分析は常にしていて。レコーディングの時も、最初と最後のテイクでは全く歌い方が変わっていることも多いですね。
ーーとても難しい質問だと思うんですけど、“歌がうまい”とはどういうことだと思いますか。
安田:なんだろう、難しいですね……人それぞれに答えがあると思うんですけど。一つ思うのは、自分の声質を生かした歌い方ができる、ということですね。みんなそれぞれに生まれ持った声があって、それを操れているか、いないかの違いなのかなって。
ーー 例えば「Sunny」では、 他の曲とは声のトーンを変えたりだとか、 どこまでファルセットを効かせるかだとか、微妙な歌声の違いがすごく伝わってきます。
安田:そう言ってもらえると嬉しいですね。 「Sunny」はあえて考えすぎずに、ストレートに歌ってみたらどうなるだろうって、素の自分で歌った曲なんです。対して「アシンメトリー」は、自分の声質などを生かした歌い方をした曲で。この2曲を並べて聴くと、全く違った歌声になっているなと思いますね。
ーー最後に、特に思い入れのあるアルバム収録曲について教えてください。
安田:アルバムタイトル曲の「Re:I」は、ここからまた新しい安田レイが始まるぞ、というイメージでつくった曲です。昨年の後半は、気持ちが揺れ動くことがたくさんあったんですね。もうすぐ27歳になるんですけど、私はここにいていいのか、歌を続けていいのか、とか。最近は周りの同世代の方が結婚したり、子供を産んだりだとか、新たな世界で新しくビジネスをスタートさせたりすることも多くて。それに比べて私は、ずっとこの立ち位置というか、変わらずにいるなと思って。ファンのみんなに何か返せているのかな、何もできてないなって、負のスパイラルにはまって抜け出せなかった時期があったんです。
でもそんな時に、すごくいいタイミングで、愛の溢れる言葉を貰ったり、ファンの方から、私の曲を聴いて失恋を乗り越えることができました、というメッセージを貰ったりして。もちろんファンのみんなは必要としてくれていると思うんですけど、“誰かに必要とされている私”を忘れていたなと思って。これじゃダメだ、みんなにもっと恩を返していきたいと思って、その気持ちを書き表したのが「Re:I」なんです。マイナスからスタートするんですけど、どんどん光が見えていくというストーリーになっていて。自分では何も見つけられないけど、いつも誰かが、あなたが教えてくれる。ここからまた新たなストーリーが始まっていくよ、って。そんな思いでつくった曲なのでぜひ聴いてほしいですね。
■リリース情報
『Re:I』
3月18日(水)発売
【初回生産限定盤】¥3,800+税
CD+Blu-ray Disc
<初回盤特典内容>
・三方背スリーブケース付
・28Pフォトブックレット
・安田レイLIVE2020「Re:I」先行予約チラシ封入
・Blu-ray Disc付
<初回生産限定盤Blu-ray Disc収録内容>
01.「Message」Music Video
02.「Classy」Music Video
03.「きみのうた」Music Video
04.「Sunny」Music Video
05.「blooming」Music Video
06.「dazzling tomorrow」Music Video
07.「over and over」Music Video
08.「アシンメトリー」Music Video
09.「through the dark」Instrumental Teaser Video
通常盤初回仕様¥3,000+税
CD (20Pフォトブックレット)
初回仕様特典内容(※無くなり次第通常盤の出荷。)
・安田レイLIVE2020「Re:I」先行予約チラシ封入
<収録曲(2形態共通)>
01.アシンメトリー
(フジテレビ系木曜劇場「モトカレマニア」オープニングテーマ)
02.fortunes
(カンテレ「グータンヌーボ²」エンディングテーマ)
03.Answers
04. over and over
(花王PYUAN TV CMテーマソング)
05.Sunny
(カンテレ・フジテレビ系列 火9ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」オープニング曲)
06.bring back the colors
07.赤信号
08.dazzling tomorrow
(花王PYUAN TV CMテーマソング)
09. Classy
(ソニーブラビア TVCM曲)
10. blooming
(アニメ「レイトン ミステリー探偵社~カトリーのナゾトキファイル~」オープニングテーマ)
11. きみのうた
(TVアニメ「夏目友人帳 陸」エンディングテーマ)
12. Re:I
■ワンマンライブ情報
『安田レイ LIVE2020 「Re:I」』
東京
開催日:2020年7月10日(金)
時間:開場 18:30/開演19:30
会場:Billboard Live TOKYO
大阪
開催日:2020年7月12日(日)
時間:開場16:30/開演17:30
会場:Billboard Live OSAKA
■関連リンク
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