IZ*ONE、『BLOOM*IZ』はグループを“福”に導く作品に 新記録達成の理由はメンバーの結束力にも

 デビューヒット「La Vie en Rose」はムーンバートンというジャンルに入る曲で、ここで試みた音作りは以降もグループにとって欠かせないものとなっている。それは『BLOOM*IZ』でもムーンバートンをベースにした作品がいくつかあることからもわかるだろう。

IZ*ONE (아이즈원) - 라비앙로즈 (La Vie en Rose) MV

 だからと言って安易に同じ手法を繰り返したわけではない。ダンスホールレゲエのテイストを加えた「DREAMLIKE」、初の単独公演『EYES ON ME』では6人のメンバーで歌った「AYAYAYA」をアルバムでは9人のバージョンで収めるなど、どちらも基本はムーンバートンだが聴き手を飽きさせない工夫をしている。

 メンバーが楽曲制作に関わったナンバーも注目に値するものばかりだ。「SPACESHIP」はクォン・ウンビが作詞・作曲に参加。“ひとつの夢を描いた時間は光になるの”と明るく歌うキラキラしたダンスポップでライブでも盛り上がること間違いなしだろう。キム・ミンジュが作詞に加わった「YOU & I」はアコースティックギターによるしっとりとしたバラード。初の単独公演で感じたことを歌詞に込めたそうだ。そしてチョ・ユリが曲作りに参加したバラード「いつか私たちの夜も過ぎていくでしょう(Our Night Will Pass Someday)」のロマンチックな音像はグループの新たな一面を見せてくれる。

 ラストの「OPEN YOUR EYES」も要チェックである。複数のソングライターが曲を書いているが、そのうちの一人、Black Editionはヒップホップ系の男性アーティスト・MCモンの変名だ。クールとコミカルを足して2で割ったようなサウンドメイクは彼ならでは。クセのあるこの曲でアルバムを締めくくることにより、音楽的にもしっかり成長している姿を示したかったとみるのは深読みしすぎだろうか。

「『BLOOM*IZ』という作品には12曲が収められているんですけども、その12曲がファンのみなさんに届くっていうのが言葉にできないぐらい嬉しくて……」

 先日放送されたラジオ番組『今夜、咲良の木の下で』(bayfm)でこのように語っていたのはメンバーの宮脇咲良だ。カムバックステージのパフォーマンスでもその喜びは十分に伝わってきた。アルバムのクオリティの高さを、活動休止を経て強くなったメンバーの結束力でさらに引き上げたというべきか、当初の予定通りに昨年11月に発売したとしても、今ほどの評価と売り上げにはならなかったかもしれない。

 災い転じて福となす。そんなことわざを地で行くような展開であった。『BLOOM*IZ』は前代未聞の騒動に巻き込まれたグループを“福”へ導いた作品として、WIZ*ONEのみならず、多くのリスナーに長く愛されることだろう。

IZ*ONE『BLOOM*IZ』

■まつもとたくお
音楽ライター。ニックネームはK-POP番長。『ミュージック・マガジン』や『ジャズ批評』など専門誌を中心に寄稿。ムック『GIRLS K-POP』(シンコー・ミュージック)を監修。K-POP関連の著書・共著もいくつか。LOVE FM『Kore“an”Night』にレギュラーで出演中。

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