嵐の魅力はアルバム曲にこそあり 『ARASHI No.1』『ARASHIC』『Are You Happy?』‥‥…サブスク解禁を機に解説
それまでの“嵐サウンド”をアップデートする『僕の見ている風景』
2010年発売の『僕の見ている風景』は彼らの“前傾姿勢”が感じ取れる一作。エネルギッシュなロック調の「movin' on」や、「マダ上ヲ」で大胆に導入されたエレクトロニクス、壮大なオーケストレーションの施された「リフレイン」といった序盤のパワフルなサウンドを聴けば、初期に比べて格段にパワーアップした彼らの姿を堪能できる。その中で、歌詞の前へ前へと突き進むイメージが印象的。
〈カラダが目覚めれば Over the border 恐いものは無いさ〉(「マダ上ヲ」)
時代はEDM全盛期。しかし、安易にそれに寄りかからずに積み上げてきた“嵐サウンド”をアップデートするにはどうすればよいのか? その答えのひとつが代表曲「Monster」であり、“アルバム曲”で言えば次曲の「Don’t Stop」である。リズミカルなブラスセクション、優雅な弦の響き、楽曲に物語性をもたらす転調、適材適所の歌割り……どこかそれまでの嵐を感じさせる曲調でありながら、確実に今へと繋がる新しい音を手に入れている。それまでの”嵐サウンド”をアップデートするアルバムだ。
ちなみに、「Monster」にも「Don’t stop」にもクレジットされ、この時期から深く関わっているアレンジャーの佐々木博史の存在は大きい。クラシックやプログレッシブロックなど様々なジャンルを吞み込み、前衛的になり過ぎないバランスで一曲のポップソングへとまとめ上げるのは彼の手腕によるものだろう。『「untitled」』収録の「つなぐ」や「「未完」」などはその最たる例である。まだ“若さ”のあった嵐が、国民的グループへと登り詰めるまでに至る中期~後期を語る上で欠かせないクリエイターのひとりだ。