HMLTD、Blossoms、King Krule、The Orielles……若手アーティストの動向から考察する、2020年UKロックの展望
2019年はFontaines D.C.やThe Murder Capital、Girl Bandらによりポストパンクの加速が続いたが、2020年もその勢いは続く。すでにアルバムリリース日が発表されているオルタナティブ・ギターロックバンドのSorry、ジャズやシンセを取り入れた楽曲を発表したSquid、Orange JuiceやAztec Camera方向に舵を切ったThe Magic Gangあたりに期待したい。
そしてついに、2月5日のアルバムリリースで全貌が明らかになった、HMLTD。Nine Inch Nailsからドレイク、さらにはパンク、グラムロック、ニューウェイヴ、ポストパンク、ニューエイジ、スペースロック、果てには日本の歌謡曲っぽさ(日本語を取り入れた歌詞もあり)までを内包するHMLTDはUKでは異色の存在だろう。国境もなく行き来する自由さ、しかし、不思議なことに知らない音は一切ない。2010年代にジャズやヒップホップがメインストリーム化する中で、ベテラン勢頼りになっていたUKロックだが、ヒップホップやその他様々な手法を取り入れたこの新人バンドの登場が、再生の一手となっているといっても過言ではない。しかも、芝居じみたこの世のものとは思えない雰囲気、Queenやデヴィット・ボウイやCulture Clubといった、失われてしまったロックスターがここに復活したといってもいいのではないだろうか。このアルバムからUKのシーンがどのように変化していくのか、今から楽しみだ。
ネオアコやギターポップの方向の、いわゆるいい歌系のバンドも忘れてはならない。アルバムリリースが予定されているスティーブン・パステルの秘蔵っ子=Spinning Coin、古き良きアメリカの映画を取り入れているFurの存在は、伝統を重んずるUKロックの支えとなるはずだ。
2020年もバラエティに富んだUKロックシーンからは目が離せない。
■杢谷えり
ライター。学生時代はジャズ研。UKを中心に執筆。TURN、アンテナ、ki-ftにも寄稿。