w.o.d.、初のUNITワンマン公演を徹底レポート スリリングな爆音の奥に垣間見えた、素直な想い
ここでライブは折り返し地点。後半への入り口でキーになったのは、バンドアンサンブルの強度だ。「VIVID」ではタイトなドラムと緩急豊かなベースのグルーヴが、「Vital Signs」ではエッジの立ったギターソロが、「THE CHAIR」ではアグレッシブにせめぎ合う間奏が、今まで以上に輝きを放っていた。昨年のVIVA LA ROCKやSATANIC CARNIVALといった大きなステージでの経験が、確実に彼らを強くしてきていることも伺える。
そして、この日のハイライトは「セプテンバーシンガーズ」だ。「自分が音楽に救われたように、この曲も誰かの背中を押せるようになったらいい」とMCで語ったサイトウ。夕暮れ時のような美しいメロディに彩られたこの曲は、何かをぶち壊そうとするエネルギーよりも、大切なものを守りたいという温かい気持ちで溢れている。憧れられるようなクールな存在であると同時に、時には自分の原点に立ち返って大切な想いを忘れずにいたいし、そんな音楽が誰かを鼓舞できたらいいーーそれは注目度が上がってきている中で、バンドをやる意味と真摯に向き合いながら芽生えた、本当に素直な感情だろう。この「セプテンバーシンガーズ」をどこで歌うかに力点が置かれたセットリストだったと思うし、それによって本人たちが得た手応えも大きかったはずだ。そこから「スコール」「Wednesday」「Fullface」と、1stアルバム収録の必殺曲を畳み掛けて、ラストの「1994」へ。熱量の高い楽曲の連投に、会場全体も拳を突き上げて湧き上がる。ボルテージがこの日最高潮に達したところで、本編が終了した。
会場が明るくなってBGMが流れ始めるが、観客は誰一人として帰ろうとせず、アンコールを待つ拍手が鳴り響く。ほどなくして3人がステージに戻ってきた。「アンコールやらないとか言いながら、毎回出てきちゃうんですよね」とサイトウがひと笑い取ると、「いい曲を1曲だけやって帰ります」と言って「みみなり」を演奏。『1994』が平成の終わりとともに、サイトウ自身の「初期衝動の終わり」を告げるアルバムだったとするならば、音楽の原体験がストレートに歌詞に反映された「みみなり」でこのツアーが締め括られるのは、とても意義深いことだと感じた。改めてセットリストを見てみると、Nirvanaのようなバンドに共鳴し、平凡な日常に抗うように音楽を掻き鳴らしながらも、次第に自らの音楽家としての役目と向き合うようになり、心の奥底にあった素直な想いを露わにしていくという、バンドのストーリーを感じられたのが何より感動的だった。もちろん、どこまで意図的だったかは定かではない。だが、楽曲の見せ方が考え抜かれていて、希望的な未来への兆しがしっかり見える構成だったからこそ、素晴らしいライブになったのは間違いない。夏の対バンツアーの日程も発表されたが、このワンマンライブを経たw.o.d.はどんな進化を見せてくれるのだろうか。若き3ピースの未来が楽しみでならない。
■セットリスト
w.o.d. presents "バック・トゥー・ザ・フューチャーII"
2020年2月1日(土)代官山UNIT
1. 0
2. QUADROPHENIA
3. 丸い真理を蹴り上げて、マリー。
4. Mayday
5. HOAX
6. lala
7. ハロウ
8. サニー
9. VIVID
10. Vital Signs
11. THE CHAIR
12. セプテンバーシンガーズ
13. スコール
14. Wednesday
15. Fullface
16. 1994
<アンコール>
17. みみなり