金子厚武の「アーティストの可能性を広げるサポートミュージシャン」

藤原さくら、DAOKO、角銅真実……2020年、新たなサポートで生まれ変わる女性アーティスト

 yahyelは元旦にリリースされた香取慎吾のアルバム『20200101』への参加でも話題を呼んだが、2010年代後半にオルタナティブな活動で道を切り開いたミツメやyahyelのメンバーが、メジャーで活動するアーティストを支える構図は時代の変化を感じさせる。そんな中、もう一人、新たな物語のを綴り始めたのが、1月22日にメジャーデビューアルバム『oar』を発表した角銅真実だ。彼女にとって初めて「うた」にフォーカスした作品で、フィッシュマンズ「いかれたBaby」のカバーなどでも話題だが、これまで活動をともにしてきた音楽家が多数参加しているのも大きな特徴である。

角銅真実『oar』

 12月に行われたアルバムのプレリリースライブには、ともにceroのサポートメンバーであるドラマーの光永渉、東京藝大器楽科打楽器専攻の先輩後輩という関係で、ソロプロジェクト「SONGBOOK PROJECT」で共演しているドラマーの石若駿、同じく「SONGBOOK PROJECT」のメンバーで、近年は中村佳穂バンドのメンバーとしても知られるギターの西田修大らが参加。先日公開されたショートムービーにはこのときの映像が使われている。

 また、DAOKOのサポートを務める網守も『oar』にストリングスのアレンジで参加していて、角銅は網守のライブメンバーでもある。やはり「アーティストとバックバンド」ではなく、個々にクリエイティブを発揮するアーティスト同士が、垣根を超えてお互いの活動をサポートし合い、ダイナミズムを生んでいるのが「今」なのだ。そんな時代感を先取りしていたKIRINJIが、先日バンド形態の「発展的解消」を発表したのも記憶に新しいが、その一方で、東京事変が「再生」を果たした2020年は、まだまだ予想もしなかったような出来事が起こるに違いない。

■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。

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