Rihwaが語る、ありのままを表現することの大切さ「自分と作品とのギャップを埋められた」

Rihwaが語る、シンガーソングライターとしての表現を選択する大切さ

 Rihwaの3rdアルバム『WHO YOU R』が、配信リリースにつぎパッケージでもリリースされた。2ndアルバム『WILD INSIDE』から1年ちょっとという早いペース。Rihwaが貪るように届けたかったのは、肩肘張った“渾身の一枚”ではなく、自分の“旬”をそのまま刻み込んだ作品だった。たしかに言葉にもメロディにも粗削りと言える部分がある。でも、だからこそ、Rihwaの歌は“踊る”。シンガーソングライターにとって一番大切な魂の躍動がそこにある。「殻を破れた」と自ら豪語するRihwaに、アルバム作りへの譲れない想いを聞いた。(藤井美保)

音楽ってやっぱり人と人との間に生まれるもの 

ーー2018年の2ndアルバム『WILD INSIDE』で提示した“内なる野性”みたいなものを、今回は身近なところで実践、検証しているような躍動感があります。トータルとして今作にどう臨んだんでしょうか?

Rihwa:前作『WILD INSIDE』は、1stアルバム『BORDERLESS』から約4年半かかってしまったんですね。ファンのみなさんは「焦らずに納得ゆくまで作ってくれていいよ」と言ってくださってたんですけど、その4年半という時間は、自分自身がこだわったというより、Rihwaをどう見せていくかといういろんなタイミングが関わってのことでもあった。だから、正直ちょっと悔しい思いもあったんです。そんな経験があったので、3rdアルバムは2ndアルバムから1年以内に作りたかった。曲が旬なうちに聴いてもらいたいという思いが強かったんです。

ーー『WHO YOU R』は、配信では2019年の暮れにリリースされました。ほぼ有言実行となったわけですね。

Rihwa:そこは「よし!」と思えている部分です。今回は本当に、自分の勢いに任せて身近な思いを書き、あえてほとんど手直しもせずにそのまま届けるということに挑みました。それがみなさんにどう響くかを知りたかったんです。自分がさらに成長するためにも、そこを見ておきたかった。

ーーどの曲にも出来立てホヤホヤ感がたしかにあります。Rihwaさんが持っているいろんな面もすごくよく見えるし。

Rihwa:いろんな面があるというのはひとつ悩みどころで、というか、実はそれ、ずっと悩んでるんですよ(苦笑)。

ーーそうなんですか!

Rihwa:本当にいろんな曲調が好きだし、いろんなタイプの曲を書くし、曲によっていろんな歌い方にもなる。統一感があるかないかと言えばないし、ジャンル分けも簡単にできない。だから、ちょっとリスクがあるなと自分でも思ってるんです。一方で、それらは全部自分から出てきたもの。だから、それこそが自分という出し方でいいんじゃないかとも思ったりしました。その思いで出したのが、1stアルバム『BORDERLESS』。今回は、「あの思いは間違ってなかった!」と思いながら、制作に臨むことができました。

ーー初心に帰れたんですね。

Rihwa:はい。そして、結果的にすごく殻を破れた作品になったと思います。

ーーそれは感じましたよ。歌声もいい意味で暴れてます。

Rihwa:アレンジャーさんをはじめ一緒に作業をしてくれた方たちみんなが、私が殻を破る力となってくれました。特に歌入れは面白かった。まず最初に、自分が準備してきた歌い方で「よし」というテイクを仕上げるんです。するとスタッフさんが、「もういいのはキープできてるから、次はピッチとかテンポとか気にせずに自由に暴れちゃって!」とけしかける。もう気心知れたメンバーばかりなので、私も「OKでーす!」と自分を全面的に解放してトライ。結果、そっちのテイクのほうが断然よくて、「出たね!」と満場一致でそれを選んだりということも。いろんな場面で本当に楽しみながらレコーディングできました。

ーー話す表情から伝わってきます。

Rihwa:今回はそういった全ての過程がすごく大事でした。

ーーデビュー7周年を迎えた昨年、故郷である北海道の隅々にまで歌を届けにいく「ハイタッチの旅」を2カ月に渡って敢行しましたね。その理由は?

Rihwa:元々旅が好きで、直接歌を届けに行きたいと思い立ったんですけど、ぶっちゃけ言うと、シンプルにライブの動員を増やしたかったんです。で、実際やってみて気づいたのは、音楽ってやっぱり人と人との間に生まれるものなんだなということ。そして、どこまでいってもひとりじゃないんだなという心強さでした。

ーー素敵です!

Rihwa:どこに行っても、初めての人でも、パッと歌った瞬間心がつながって、ずっと知ってる友だちみたいになれた。また会いに来たいと私も思いましたし、逆にその後、私に会いにライブに来てくださる方もたくさんいました。自分が思って行動すれば、世界は道でつながっていくと感じられるいい旅でしたね。頭ではわかっていたことを、「あ、やっぱりそうだよね」と再確認し、自分の思いに芯が通ったように思えたんです。自信にもつながりました。そこからできたのが「Love Today!」という曲なんです。

Rihwa「Love Today!」ミュージックビデオ

ーー冒頭の〈愛はきっと結ばれて繋がってゆくの〉は、その体験からきてるんですね。

Rihwa:みんなで笑顔になれる、大地のような明るい歌にしたかったんです。今、ライブで歌うと、あのとき出会ったいろんな顔が浮かんで、自分でもグッときちゃいます。

ーー故郷である北海道の意味を再確認する旅でもありましたか?

Rihwa:そうですね。北海道でラジオ番組をやらせてもらうようになって4年ちょっと。収録で帰るたびに、いろんなところからお仕事のお声がけをいただけるようになって、去年は月に4回ほど行ったり来たりしてました。「ハイタッチの旅」もあったから、1年の半分は北海道にいた感じだったんです。そんな中で、どんなときも応援してくれる人がいるということが、自分にとってすごい支えになっているなとあらためて気づきました。「私ってどんなスタイルでやればいいんだっけ?」と揺らいだときも、「いやいやいや、ありのままの私を受け入れてくれる人たちがあの場所にいる」と、すぐに気持ちを戻すことができる。どんな対バンのシチュエーションでも、北海道にいるときの自分に戻ってやろうと思えるようになったんです。

ーー北海道は、Rihwaさんの精神的な支柱なんですね。

Rihwa:北海道で出せてる自分が、やっぱりリアルな自分なんですよね。うーん、どこからそう思えたんだっけな……ラジオ番組のリスナーが増えて、絆を感じるようになったあたりかな……なんかもう自分を曝け出しちゃおうと思ったんです。それをまた受け入れてくれる人たちがいるとわかったときに、いい意味で強くなれた。東京にいるときは、どうしてもカッコつけちゃうんですよね。柄じゃないのに(笑)。

ーーRihwaさんがありのままでいることは、北海道以外に何かを伝えていくときにも大切ですよね。それがジャンルに代わるものになりうる。

Rihwa:たぶん、そこを一番わかってもらえるのがライブだと思うんです。で、どうやったらライブに来てもらえるかと考えた第一歩が、自ら出向いて歌を届けにいくことだった。この時代に逆行する超アナログなやり方ですけど、自分には合っていると思いました。

ーーそういう心境の中で、今作の制作が始まったんですね。

Rihwa:はい。旬の気持ちを曲にしていくうちに創作意欲に拍車がかかって、そのまんまを届けたいという思いがさらに強くなりました。そうできる環境も得て、全てのジャッジを自分でしなきゃならなくなった。自由ではあるんですけど、不安もハンパなかったです(苦笑)。

ーー「これで合ってるのかどうかがわからない」っていう?

Rihwa:そうです。でも、最終的に気持ちを、「そんなの出してみないとわからない」というところに持っていけました。

ーーそれはある意味の突破ですね。で、意表を突かれたのが、「MARIMO」です。「ラテンエクスプロージョンにRihwaも参戦?」的な面白さで(笑)。

Rihwa:これは、FMノースウェーブ『Hidey-Ho!!』でやっている「ソングファクトリー」というコーナーから生まれました。北海道のモノ、コト、ヒトを勝手にピックアップして勝手にCMソングを作っちゃおうというコーナーなんです(笑)。

ーー北海道といえばマリモでしょと?

Rihwa:そのノリでサビを作ったのが最初。自分でもそれがすごく気に入っちゃって、もうすぐにアレンジが頭の中で鳴り出しました。シャキーラみたいな感じにしたいなと。

ーーまさにそうですね。歌詞がまた、「えっ、これ何語? スペイン語?」みたいな感じで(笑)。

Rihwa:「アーティストにとって大事なのは何か?」みたいなことを考えてきたときに、尊敬するアーティストのみなさんにはユーモアのある曲が必ずあって、ライブで盛り上がってるとふと思ったんです。そこから、だったら私は「MARIMO」で思いっきりハジけてみようと(笑)。マリモという言葉自体がすごくスパニッシュっぽく思えたので、歌詞はとにかく「っぽい」語尾にこだわりました。私としては、〈丸めるおばさん〉が一番「っぽい」かなと(笑)。

ーーああ、あそこ好きですよ。また巻き舌をうまく使ったりして、発音も「っぽい」(笑)。tvk『関内デビル』で親交の深い大場英治さんも冒頭のセリフで参加してますね。あれはスペイン人にしか思えなかったです。

Rihwa:セリフ自体は、ちゃんと調べた本当のスペイン語なんです。男性の求愛を女性が断るやり取りをしていて、最後にまったく意味のない「アッカンコ」(笑)。

ーー呆気にとられて、じわじわきました(笑)。

Rihwa:出来上がってすぐ、ちゃんとスペイン語に聞こえるかどうかメキシコ人の友だちに確認してもらったんですね。「男性のほうどうだった?」って聞いたら、「えっ、彼、スパニッシュじゃないの?」って驚いてました。本場の人が騙されるって(笑)。

ーーRihwaさんもお笑いの才能アリです。

Rihwa:ホントですか? うれしいです(笑)。小さい頃から家族を笑わせるのが大好きで、いつも必死で変顔考えたりしてた。そういう面をやっと出せました!

【Music Video】Rihwa「MARIMO」

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