宮野真守、森久保祥太郎、福山潤……音楽活動も活発なベテラン声優たちのラップ表現

声優におけるラップは個性と技術の見せ場に

福山潤『P.o.P -PERS of Persons-』

 そして、1月8日に2ndアルバム『P.o.P -PERS of Persons-』をリリースした福山潤は、自身が作詞に参加した「パース・オブ・パーソンズ」でラップを聴かせている。イントロからギターが激しく唸りを上げるロックチューンで、四つ打ちのビートが心地良く響くナンバー。力強い歌声から一転、サビでは爽快なメロディを聴かせている。ラップは他のメロディとは違った低音の声で、まるでがんじがらめになった鎖を引きちぎって立ち上がるような力強さがある。

 同曲の作曲・編曲を手がけたJUVENILEは福山の1stシングル曲「KEEP GOING ON!」からお馴染みで、RADIO FISH「PERFECT HUMAN」を手がけたことでも知られる気鋭のサウンドプロデューサー。RAP作詞のRYUICHIも同シングルのC/W曲「ランプジェンガ」の作詞を手がけ、1stアルバム『OWL』収録の「もしも」もその2人が手がけている。また歌詞は、福山本人と共にTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの松井洋平が共作で参加。2ndシングル曲「Tightrope」、3rdシングル曲「dis-communicate」、2ndアルバム『P.o.P -PERS of Persons-』では多くの曲の歌詞を福山と共作している。

 ラップの魅力は、声色や声のキレ、フロウ、ライミングなど多々ある。声優は滑舌も良いからだろうか、三者とも声のキレが抜群だ。こうした楽曲が歌えるのは、声優としてアーティストとしての経験値の高さがあればこそだろう。またフロウやライミングに関しても、強者揃いのクリエイターたちがバックアップすることによって、まったく違った個性を発揮していて聴き応えがある。楽曲に関しても三者三様であり、それぞれ違った魅力に溢れている。そういった点で声優におけるラップというものは、ある意味で個性と技術の見せ場と言えるかもしれない。ことアニメのタイアップ曲においては、ラップパートが放送では流れないことも多く(buzz★Vibesは頭からラップだけれど)、その声優自身の心情が表れていることもある。もちろん声優の歌や楽曲の魅力はそれだけではないが、楽曲の神髄を楽しむための1つのポイントとして着目するのも面白いのではないだろうか。

■榑林史章
「THE BEST☆HIT」を経て音楽ライターに。オールジャンルに対応し、インタビュー本数は延べ4,000本。現在は日本工学院で講師も務める。

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