Tinashe、Free Nationals、Kaytranada……早くも2020年R&Bシーンの鍵となりそうな話題作5作をピックアップ

・Tinashe『Songs for You』
・Free Nationals『Free Nationals』
・Kaytranada『BUBBA』
・Usher feat. Ella Mai 「Don’t Waste My Time」
・The Weeknd「Blinding Lights」「Heartless」

 R&Bの世界は、ヒップホップはもちろん、周りを取り巻く音楽ジャンルと呼応しながら進化し続ける一方で、周期的に過去のサウンドのリバイバルもトレンド化する傾向にある。今月末に開催される『第62回グラミー賞』ではリゾが最多8部門にノミネート、H.E.R.が昨年に引き続き最優秀アルバム賞に名を連ねるなど、R&Bアーティストのクロスオーバーな活躍も目立っている。2020年は果たしてR&Bにとってどんな年になるだろうか。そのヒントが隠されていそうな最近の話題作をまとめてピックアップする。

自身のレーベルより再出発!歌姫ティナーシェの大変身作
Tinashe『Songs for You』

Tinashe『Songs for You』

 全米シングルチャート“Billboard Hot 100”で21週にわたりロングランヒットした「2 On」で華々しいソロデビューを飾った歌姫ティナーシェ。しかし、その勢いのままリリースされる予定だった次作『Joyride』は度重なる延期を繰り返し、結果3年越しの発売に。力作だったがプロモーション不足でセールスは思うように振るわず、ファンの間では所属レーベル<RCA>への不満が募っていた。そんな彼女がレーベルを離脱し、自身が立ち上げた<Tinashe Music>より1年半ぶりの新作『Songs For You』を完成させた。

 「長年同じチームでやってきたけど、リスクを冒してでも軌道を変える必要があったの」と本人が明かしたように、少しアイドルチックな面もあった以前のお嬢様イメージから、妖艶な大人の女性へと変身。サウスロンドン出身の女性ラッパー、ミス・バンクスを客演に迎えた先行シングル「Die a Little Bit(feat.Ms Banks)」ではFKAツイッグスを思わせる官能的な一面を見せ、G・イージーとの緊張感ある共演「So Much Better」もお見事。方向転換の結果は大成功である。アルバムにはヒットメイカやOZらといった売れっ子プロデューサーが名を連ね、来日時に撮影されたと思われるビジュアルを用いた「Save Room for Us (Tokyo Visual)」や「Die A Little Bit」などのMV群からは自身のクリエイティビティを解放させたティナーシェの音楽に対する姿勢がしっかりとうかがえる。(そして全作品ダンスが素晴らしい!)また、アルバム発表直前には<Roc Nation>とのマネージメント契約を発表。第2章を歩み始めた彼女の今後がますます楽しみだ。

Tinashe - Die A Little Bit ft. Ms Banks
Tinashe -- SAVE ROOM FOR US (Tokyo Visual)

アンダーソン・パークが絶大な信頼を寄せるバンドの初リーダー作!
Free Nationals 『Free Nationals』

Free Nationals 『S/T』

 アンダーソン・パークのライブバンドとしても知られるFree Nationalsが、単独名義でのフルアルバムを発表。ホセ・リオス(Gt)、ロン・アヴァント(Key/talkbox)、ケルシー・ゴンザレス(Ba)、カラム・コナー(Dr)の4人は、パークとLAの音楽学校時代(まだ彼がBreezy LoveJoyとしてラッパー活動していた頃)からの仲間であり、先コロンブス期の歴史文化から名付けられたバンド名は、パークの後見人でもあるSa-Ra Creative Partnersのシャフィークによる教えから得たものだという。「生まれながらのファンク」と自称するサウンドの通り、ダニエル・シーザーがリードを取ったスウィートソウルな「Beauty & Essex」や、故マック・ミラーとカリ・ウチスを迎えた「Time」など、どれだけメロウな楽曲でもリズム隊の骨太さは損なわれない。

 メンバーが「すべてジャムセッションから生まれたレコードなんだ。その自然さこそが、アルバムにエナジーを与えていると思う」と語る通り、ロンのトークボックスが冴えるアンダーソン・パークとのブギーな1曲「Gidget」や、唯一のインストとなるAOR調の「Lester Diamond」など、ひたすらに耳馴染みの良い楽曲が並んでいる。ほかにもゲスト陣はレゲエ界からクロニクス、ニュージランド出身のサイケポップバンド、Unknown Mortal Orchestraまで幅広く参加しているが、それによってバンドとしての音楽性がより浮き彫りになった快心作だ。

Free Nationals - Beauty & Essex (feat. Daniel Caesar & Unknown Mortal Orchestra) (Official Video)

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