米津玄師が手がける楽曲は、なぜいずれもロングヒット? 関連シングル3作がトップ10入り

 また、米津作品はいわゆるバンドサウンドもあれば、打ち込み系の楽曲もありつつ、メジャーデビュー後のオーケストラアレンジの施された壮大なものまでその音楽性は多岐に渡るが、どれにも共通する要素としてビートの存在がある。大衆音楽の歴史を語る上でリズム面は欠かせない要素だが、彼の音楽を語る上でもそれは同様。それも単調な四つ打ちではなく、洗練されたビートである。「パプリカ」のリズムも飛び跳ねるような楽しさがあり、ドラムとベースだけでも十分踊ることができる。あの「Lemon」でさえも曲全体に漂う悲壮感の中にしっかりとリズムの”跳ね”を感じ取れる。「馬と鹿」も然りだ。

米津玄師 MV「Lemon」

 彼は常に「普遍的なものを作りたい」と口にしているが、口ずさみ易い日本語詞や、明るさの中にもどこか切なさを感じさせるメロディ、そして跳ねるリズムなど、米津作品に共通するそうした要素は、古今東西のスタンダードナンバーが持つ要素でもある。それを考えれば、彼の作品がこうして多くの人びとに受け入れられているのは必然なのかもしれない。

 YouTubeなどのネットサービスが普及し簡単に曲をチェックできる今の時代、テレビ放送の効果でCDが売れるというのも「物として持っておきたい」「良い音で深く聴き込みたい」という意識の表れだろう。若者のみならずCDで音楽を聴く世代にまで人気が広がっているのは、曲の良さがあってこそである。まさに”作曲家としての米津玄師”の評価をチャートアクションからも実感できる結果であった。今はただ、嵐の「カイト」がどういう形態で、いつ発売されるのかが気になるばかりである。

■荻原 梓
J-POPメインの音楽系フリーライター。クイックジャパン・リアルサウンド・ライブドアニュース・オトトイ・ケティックなどで記事を執筆。
Twitter(@az_ogi)

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