SIX LOUNGEが『THE BULB』で表現した、いまの自分たちらしさ 3人の証言からバンドの現在地を読み解く
大分発の3ピースバンド、SIX LOUNGE。パンク、ロックンロール、ハードロック、さらに日本のフォークや歌謡曲をルーツに持つーーギター&ボーカルのヤマグチユウモリは井上陽水、吉田拓郎などに親しんできたというーー彼らは、2018年4月にユニバーサルミュージック内レーベル<ZEN MUSIC>からミニアルバム『夢うつつ』をリリースし、メジャーシーンに進出。数多くのフェスに出演し、オーセンティックなロックンロールサウンド、激しさと叙情性を含んだメロディライン、そして、ドラマーのナガマツシンタロウが描く情景的な歌詞によって、確実に知名度を上げてきた。2019年6月に行われたツアーでは、新木場STUDIO COAST、Zepp Fukuokaでの公演が実現するなど、ライブの規模も拡大している。
「会場がデカくなると、お客さんをこうやって(と両腕で抱え込むポーズ)できない気がしてたんですけど、そうでもないですね。大勢の人の前で音を外したら恥ずかしいくらいかな、気になるのは(笑)」(ヤマグチ)
「初めてZeppでやったときは“でけえな”と思ったけど、(ドラムを)叩いてるとすごく気持ち良くて。小さいライブハウスも好きだし、どっちも楽しんでますね」(ナガマツ)
「大きい会場は歓声もすごいし、気合い入りますね」(イワオリク/Ba)
2019年12月11日にはニューアルバム『THE BULB』を発表。前作『東雲』以来、約3年半ぶりのフルアルバムである本作には、今年リリースされたシングル「天使のスーツケース」「幻影列車」を収録。ライブハウス、フェスなどで鍛えられたアンサンブル、表現力を増した歌をダイレクトに響かせる充実作だ。
「いまの自分たちを出せたと思います。前作との違いですか? 細かいところはアレコレ変わってるけど、根本は変わってないと思いますね」(ヤマグチ)
「いろいろなことを覚えて、それを使えるようになって。でも、元は変わらないというか」(ナガマツ)
「レコーディングは以前よりスムーズになりましたね。後になって“こうしておけばよかった”ということが少なくなっているので」(イワオ)
鋭利な疾走感をたたえたバンドサウンドとドラマティックなメロディがぶつかり合う「★」(ブラックスター)、ブルースの匂いを振りまくミディアムチューン「発光」、キャッチーなギターリフを軸にした「ラブポップ」など楽曲の幅も確実に広がっている。ヤマグチが初めて作詞した「窓を開けて」も、バンドの表現の広がりを示す1曲だろう。
「メロディにはずっとこだわっていて、メロディ先行の曲が多かったんですよ。“ポップにならないようにしよう”と思っていてもポップになるのは、そのせいかもしれないです。今回はリズムを意識した曲も増えてますね。ライブのことも考えながら、“サビでこういうリズムにしたい”みたいな話をすることが多かったので。『窓を開けて』の歌詞に関しては、曲を作ったときにある程度できていて、“いいね”ということになったので自分で書きました。歌詞は難しいですね。衝動的に浮かんできた部分はいいんですけど、続きを書くのが大変だったんで。(作詞を担当している)シンタロウはすごいなと思いました(笑)」(ヤマグチ)
「いまの自分たちのことを曲にしておきたかった」(ナガマツ)という「23歳」も、本作を象徴する楽曲だろう(ヤマグチ、ナガマツは現在23歳。イワオは22歳)。特に〈燃える繊細な爆音の花束〉という歌詞は、SIX LOUNGEのイメージと直結する名フレーズだと思う。
「(〈爆音の花束〉というフレーズは)『ラストシーン』という曲でも使っていて。23歳の今を描こうと思ったときに、この言葉がいいなと思ったんですよね。バンドのなかで、肌で感じていることを表現できたというか」(ナガマツ)
「『ラストシーン』のときも“いいな”と思ってたし、自分たちらしい歌詞だと思います。ふだん、自分たちの特徴について考えることはないし、聞かれてもよくわからないですけどね(笑)。カッコいいことをやってる自信はありますけど」(ヤマグチ)
「自信があるから、“これはロックじゃない”と言われても関係ないというか。実際に言われたことはないですけどね(笑)」(イワオ)
ヤマグチ、ナガマツを中心に2012年に結成されたSIX LOUNGE。10代の頃にバンドを始めてから8年の歳月が過ぎ、23歳という年齢になった現在地を彼らはどう捉えているのだろうか?
「バンドを始めたときは、これで食えるなんてまったく思ってなくて。“激しいほうがカッコいい”と思って、“ティーンエイジ・パンクロック・バンド”って名乗ってたんですけど、途中で恥ずかしくなってやめたり(笑)。ライブが多くなって、あんまり地元(大分)にいられなくなったりいろいろ変わったところはあるけど、自分自身はぜんぜん変わってないですね。23歳ってもっと大人かと思ってたけど、実際になってみると、そうでもなかったから」(ヤマグチ)
「気づいたら23歳になってた感じですね(笑)。バンドを始めた頃に何を考えてたかは覚えてないけど、何にせよ、バンドは続けようと思ってました。それが続いているのは、まあ、良かったのかなと」(ナガマツ)
「俺はまだ23歳じゃないですけど……税金とか高いし、払うのが大変ですね(笑)」(イワオ)
「バカみたいに売れてほしいですね。ミリオン(100万枚)売れたいです(笑)」(ヤマグチ)「自分たちの音楽が届いてない人はクソだと思ってます」(ナガマツ)という言葉を平然と放つ姿勢も気持ちいい。“バンドをやり続ける”というシンプルな動機を貫き、繊細さ、優しさ、怒りなどを内包した歌を爆音で放つSIX LOUNGE。脈々と続く日本語のロックンロールを継承しつつ、際立ったオリジナリティを打ち立てた本作『THE BULB』によって彼らは、さらなる飛躍を果たすことになりそうだ。
(取材・文=森朋之)
■リリース情報
『THE BULB』
発売:2019年12月11日(水)
初回限定盤(2CD)¥4,050(税抜)
通常盤(CD)¥2,800(税抜)
DISC 1
1.ナイトタイマー
2.★
3.発光
4.ラブポップ
5.切り裂く風
6.うるせえ
7.窓を開けて
8.天使のスーツケース
9.23歳
10.ホワイトノイズ
11.愛の荒野
12.メルシー
13.幻影列車
DISC 2
全6曲/インディーズ時代の楽曲を再レコーディング
■ライブ情報
『SIX LOUNGE TOUR 2020“THE BULB”』
1月8日(水)渋谷 CLUB QUATTRO ※ワンマン
1月11日(土)名古屋 CLUB QUARTTO
1月12日(日)梅田 CLUB QUATTRO
1月18日(土)club SPOT
1月19日(日)松山 W studio RED
1月25日(土)熊本Django
1月26日(日)鹿児島SR HALL
2月1日(土)福岡kokura FUSE
2月2日(日)岡山IMAGE
2月4日(火)神戸 太陽と虎
2月5日(水)京都MUSE
2月6日(木)奈良NEVER LAND
2月8日(土)松本 ALECX
2月9日(日)静岡UMBER
2月15日(土)郡山 HIPSHOT JAPAN
2月16日(日)岩手the five morioka
2月18日(火)F.A.D YOKOHAMA
2月19日(水)千葉LOOK
2月21日(金)水戸 LIGHT HOUSE
2月22日(土)宇都宮 HEAVEN‘S ROCK VJ-2
2月29日(土)沖縄 桜坂セントラル
3月7日(土)高松 DIME ※ワンマン
3月8日(日)広島CLUB QUATTRO ※ワンマン
3月14日(土) 札幌 PENNY LANE24 ※ワンマン
3月20日(金祝)新潟GOLDEN PIGS RED ※ワンマン
3月21日(土)仙台 CLUB JUNK BOX ※ワンマン
3月28日(土)愛知 DIAMOND HALL ※ワンマン
3月29日(日)金沢 vanvanV4 ※ワンマン
4月4日(土)大阪 BIGCAT ※ワンマン
4月12日(日)Zepp Fukuoka ※ワンマン
4月19日(日)Zepp Tokyo ※ワンマン